親等とは? 数え方や注意点、知っておくべきことなどについて
- 遺産を受け取る方
- 親等とは
身近な方が亡くなり相続が現実のものになると、親族関係や、親族関係の近さを示す「親等」について考える機会が増えることになります。
山口市役所のホームページを見てみると、相続人を調べる際に必要な戸籍の証明書を請求できるのは配偶者と「直系の親族」等、亡くなった方の国民年金の受け取り資格は「3親等以内の親族」に限るなどの案内があります。
法律上の親族関係や親等は、実生活での親しさの度合いとは異なることも珍しくありませんが、相続手続のために正しく理解しておきたいところです。今回のコラムでは、親等や親族とは何か、相続人となる親族(法定相続人)や注意点について、ベリーベスト法律事務所 山口オフィスの弁護士が解説します。
1、親等・親族とは
相続手続で重要となる法律上の親族や親等とはどのようなものなのか解説します。
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(1)親等とは
親等は、親族関係の近さを「1親等」「2親等」などと数的に表す単位で、親族の範囲を限定する際に「○親等以内」というように表現して用いられます。
親等は、生活を援助する扶養義務や成年後見制度など、さまざまな規定の中で「○親等内の親族(血族)」などと表現されています。 -
(2)親族とは
法律上の「親族」とは、以下の関係にある人物を指します。
- 六親等内の血族
- 配偶者
- 三親等内の姻族
上記のように、血族や姻族についてはかなり広い範囲で法的に「親族」として扱われます。
なお、相続人となるのは、親族の中から限定された範囲になりますが(第3章で解説)、故人の介護などに尽くした親族は、貢献に見合った金銭(特別寄与料)を請求することができることになっています。相続人ではない親族は相続手続とは無関係というわけではないので、注意が必要です。
2、親等の数え方|血族と姻族
親等はどのようにして数えるのか、また、親族の中でも「血族」と「姻族」では相続の手続で大きな違いがあるので、血族と姻族について解説します。
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(1)親等の数え方
民法では、親等の数え方を次のように定めています。
- 親等は、親族間の世代数を数えて、これを定める
- 傍系親族の親等を定めるには、その一人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の一人に下るまでの世代数による
親等は、親子関係を1単位として数えるので、親子関係で連なる親、祖父母、子、孫などの血族(直系親族)は、世代数がそのまま親等の数です。
傍系親族とは、祖先が共通する血縁関係のある親族のことで、親が共通する兄弟姉妹や甥、姪、祖父母が共通するおじ、おば、いとこなどが該当します。傍系親族の場合は、共通の祖先までの親等の数と、共通の祖先から傍系血族までの親等の数を合計した数が親等の数になります。 -
(2)血族
親族は、血族と姻族で区別されますが、血族とは、血縁関係のある親族です。血族の関係は、実の親子関係のように生物学的に「血のつながった」関係だけではなく、養子縁組による法的な親子関係も同様に扱われます。
なお、実の親子関係は生物学的な観点で決まるので、血族の関係が消滅することはありませんが、養子縁組の場合は縁組を解消する離縁により血族の関係が消滅します。 -
(3)姻族
姻族とは、婚姻により生じる親族関係で、いわゆる「義理の父」「義理の妹」などと言われる親族です。姻族の親等は、自身の配偶者を基準にした親等の数で、義理の父は1親等、義理の妹は2親等となります。
また、自分の血族の配偶者もその配偶者に限って姻族になり、婚姻した血族を基準にして親等の数が決まります。
たとえば、子の配偶者は1親等の姻族、兄弟姉妹の配偶者は2親等の姻族となりますが、これらの配偶者の親族(子の配偶者の親など)との間では親族関係は生じません。姻族の関係は離婚により消滅しますが、死別の場合は当然には消滅せず、生存配偶者が役所に姻族関係終了届を提出することで消滅させることができます。
なお、法律の規定により相続人となるのは配偶者と一部の血族なので、姻族が相続人になることはありません。 -
(4)親等の数のまとめ
親等の数を血族と姻族の別にまとめると次のようになります。
① 血族
親等の数 直系 傍系 1親等 父母、子、養親、養子 2親等 祖父母、孫 兄弟姉妹 3親等 曾祖父母、曾孫 おじ、おば、甥、姪 4親等 高祖父母、玄孫 祖父母の兄弟姉妹、甥・姪の子、いとこ 5親等 5世の祖(高祖父母の父母)、来孫 曽祖父母の兄弟姉妹
4親等傍系血族の子6親等 6世の祖(高祖父母の祖父母)、昆孫 高祖父母の兄弟姉妹
5親等傍系血族の子(注)2親等以下で養子の子孫が血族となるのは養子縁組後に出生した場合に限る
② 姻族親等の数 直系 傍系 1親等 - 配偶者の父母・連れ子
- 親(※)・子の配偶者
2親等 - 配偶者の祖父母・連れ子の子
- 祖父母(※)・孫の配偶者
- 配偶者の兄弟姉妹
- 兄弟姉妹の配偶者
3親等 - 配偶者の曽祖父母・連れ子の孫
- 曾祖父母(※)・曾孫の配偶者
- 配偶者のおじ・おば・甥・姪
- おじ・おば・甥・姪の配偶者
(※)親、祖父母、曾祖父母の配偶者が血族ではない場合(再婚相手など)
3、法定相続人の範囲|親等の注意点
ここまで親等や親族関係について解説してきましたが、法律により相続人となる親族や注意点について解説します。
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(1)法定相続人となる親族、相続の順位
民法の規定により相続人となるのは、配偶者と次の血族の中で順位が高い人です。
- 第1順位 子
- 第2順位 親等が近い直系尊属
- 第3順位 兄弟姉妹
直系尊属とは、直系血族で本人よりも上の世代という意味なので、第2順位の相続人は、存命の方の中から親、祖父母、曾祖父母の順に決まります。
第1順位や第3順位の相続人が被相続人(亡くなった方)よりも前に亡くなっているか、相続権を失っている場合は、その子が代襲して相続します。
相続権を失うケースとしては、被相続人を殺害するなどして相続欠格に該当する場合、被相続人に対して虐待や著しい非行などにより廃除された場合があげられます。
なお、第1順位と第3順位では、代襲相続できる範囲に違いがあります。第1順位の子を代襲するのは、孫、曾孫、玄孫の順に世代に限りはありませんが、第3順位の兄弟姉妹を代襲できるのは甥と姪までに限られています。相続放棄をした場合は、初めから相続人ではなかったことになるので、代襲相続は発生しません。 -
(2)相続税の違い
被相続人と相続人の親等の数は、相続税の税額で違いがあります。1親等の血族と配偶者以外の人が相続人になる場合は、相続税額が2割加算されることになっています。
例外として、被相続人の孫以下の子孫が代襲相続人として相続する場合は2割加算されませんが、孫以下の子孫が養子として相続する場合は原則通り2割加算の対象となります。 -
(3)法定相続人になるケース|ならないケース
相続人になるのか分かりにくいケースについて、補足を兼ねて解説します。
① 離婚した場合
配偶者の相続権は、被相続人が亡くなった時点での婚姻関係で判断されます。亡くなる前に離婚した元配偶者には相続権はありません。元配偶者との間の子との関係では、両親の離婚により親子の血族の関係がなくなることはないので、第1順位の相続人になります。
② 配偶者の連れ子
被相続人と親子関係にない配偶者の連れ子は姻族になるので相続権はありません。被相続人が配偶者の連れ子と養子縁組をしている場合は、養子として第1順位の相続人になります。
③ 事実婚・内縁のパートナー
配偶者としての相続権の有無は、法律上の婚姻関係により決まるので、法律婚以外のパートナー間では相続権はありません。
なお、法律上の婚姻関係にないパートナー間の子については、母子間では当然に血族の関係になるのが一般的ですが、父子間では認知や養子縁組をしなければ法律上の親族関係が生じず、相続権もありません。
④ 養子の考え方
養子縁組には、普通養子と特別養子があります。普通養子も特別養子も、養親と養子との間に法律上の親子関係を生じさせて、養子が養親の親族の一員となること、養親は養子の実親と親族関係にはならないことは共通しています。
普通養子の場合は、実親との親族関係も存続しますが、特別養子の場合は縁組により実親との親族関係は終了するのが原則(配偶者の連れ子を特別養子にした場合は例外)です。
つまり、普通養子縁組をした養子は、養方と実方の双方で相続人になりますが、特別養子の場合は、実親の相続人になることはありません。
なお、縁組の時点で出生している養子の子や孫は、養親の親族との間で親族関係は生じないので、相続権もありません。
⑤ 異母(異父)兄弟姉妹の相続分
異母(異父)兄弟姉妹とは、父親または母親の一方のみが共通する兄弟姉妹のことです。親が被相続人の場合は、その親と親子関係にある子はすべて同等の相続権があります。
ただし、兄弟姉妹が被相続人の場合は、両親が共通する兄弟姉妹のほかに、異母(異父)兄弟姉妹も「半血兄弟姉妹」として相続人となりますが、その相続分は両親が共通する兄弟姉妹の半分とされています。
4、相続に関するご相談は弁護士へ
相続では、親族間でのもめ事で頭を悩ませることもありますが、法律知識が必要になる場面も多々あるので、この両方に対応できる弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
相続の手続では、相続人を調べるための戸籍の収集や相続財産の調査を行い、相続人全員で誰が何を相続するのか話し合う遺産分割協議を行うことになります。慣れない事務作業も多く、面識があまりない相続人との話し合いが必要になることもありますが、弁護士のサポートがあれば安心です。
また、不合理な主張をする相続人がいるようなケースでも、相続人の権利である遺留分など、法的に主張できることは主張して、後悔を残さない遺産分割をすることも期待できます。
不動産を相続する場合や生前に贈与を受けた相続人がいる場合などでは、相続分に応じて財産を分け合うだけで解決するとは限りませんが、弁護士は合理的な解決方法を提案することが可能です。
相続の手続では、相続放棄や相続税の申告、納付など期限がある手続もありますが、相続手続を熟知した弁護士であれば、期限を徒過してしまう心配もありません。スムーズに相続手続を進めたい、トラブルを避けたいとお考えの場合は、できるだけ早めに弁護士のサポートを受けるのがおすすめです。
5、まとめ
親等は、親族関係の近さを示す指標としてさまざまな法律や手続のルールなどに用いられています。
親族には、大きく分けて血族と姻族があり、法律上親族となるのは配偶者、6親等以内の血族、3親等以内の姻族で、血族はかなり広い範囲で親族関係があります。一方で、実生活では近い関係にあることが多い配偶者の連れ子や内縁カップル、内縁カップル間の子でも、法的な婚姻や認知、養子縁組をしなければ親族関係や相続権がないケースもあります。
親族関係は、相続人の範囲を判断する基準になりますが、相続権がよく分からない場合や、相続手続をスムーズに進めたい場合は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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