遺言書の検索方法|誰が検索できる? 生前の検索は可能?

2023年08月01日
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遺言書の検索方法|誰が検索できる? 生前の検索は可能?

「遺産分割」という言葉ですぐに思い浮かぶのは「遺言書」ではないでしょうか? 「遺言書」があれば、どうやって遺産分割をするのか揉める可能性が少なくなります。そのため、被相続人(遺言者)が亡くなった際に必要になるのが「遺言書」の確認です。

しかし、遺言書があるのかどうかもわからない場合、どうやって遺言書の有無や保管場所について調べればいいのでしょうか? 実務上、よく利用される遺言書には、「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」があり、それぞれ検索方法が異なります。

ここでは、「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」のそれぞれの遺言書の検索方法について、ベリーベスト法律事務所 山口オフィスの弁護士が詳しく解説していきます。

1、公正証書遺言の検索は「遺言検索システム」

遺言書が、「公正証書遺言」の場合に、検索に利用できるのが、「遺言検索システム」です。「遺言検索システム」について詳しく解説していきます。

  1. (1)遺言検索システムとは

    そもそも「公正証書遺言」とは公証人に作成をしてもらい、公証役場で原本を保管してもらえる遺言書のことです。

    「公正証書遺言」を作成すると、遺言者の氏名、生年月日、作成年月日、公証人の名前、作成した公証役場名などの情報がデータベース化されてコンピューターで管理されます。

    このデータを検索できるシステムが「遺言検索システム」です。

  2. (2)遺言検索システムの利用方法

    遺言検索システムはどこでどのように利用することができるのでしょうか?遺言検索システムの利用方法について確認していきましょう。

    ① 利用できる場所
    遺言検索システムは日本全国の公証役場で利用可能です。郵送やインターネットでの検索はできないため、公証役場に必ず出向く必要があります。
    公証役場によって予約が必要な場合もあるので、訪れる公証役場に事前に確認しておくといいかもしれません。

    ② 検索できる内容
    遺言検索システムでは、データベースに登録されている情報を検索できます。
    そのため、公正証書遺言の有無や登録情報は確認できますが、公正証書遺言の内容を確認することはできません
    内容を確認するためには原本の閲覧か謄本の交付が必要です。

    ③ 利用できる人
    遺言検索システムは遺言者が生きているか否かによって利用できる人が異なります。
    遺言者が生きている場合、利用できるのは遺言者か遺言者の代理人です。そのため家族であっても利用することができません。
    一方、遺言者が亡くなっている場合は「相続人」や「遺言執行者」などの利害関係人やその代理人が利用することができます。

    ④ 利用にかかる費用
    遺言検索システムの利用に費用はかかりません。ただし検索の結果、公正証書遺言があると判明した場合、遺言書の内容を確認する場合は費用がかかります。原本を1回閲覧するごとに200円、謄本の交付を請求すると1ページにつき250円の手数料を支払わなくてはなりません。
    また、「遺言検索システム」を利用した公証役場とは異なる公証役場に遺言書が保管されていることもあります。直接出向くことが難しい距離の公証役場に保管されている場合は、郵送で謄本を請求することも可能です。その場合は、別途2500円の手数料が必要です。

2、自筆遺言の検索は「自筆証書遺言保管制度」

遺言書が「自筆証書遺言」の場合に検索に利用できるのが「自筆証書遺言保管制度」です。

「自筆証書遺言保管制度」について詳しく解説していきます。

  1. (1)自筆証書遺言保管制度とは

    「自筆証書遺言」とは、遺言者自身が書いた遺言書のことです。手軽に作成できるメリットがある一方、以下のようなデメリットもあります。

    • 相続人が見つけられない
    • 遺言書の形式が要件を満たせず無効になってしま
    • 遺言書を紛失してしまう
    • 利害関係人に偽造・改ざんされる
    • 相続人は家庭裁判所で検認を受けなくてはならない


    このようなデメリットを解決するために令和2年から始まった制度が「自筆証書遺言保管制度」です。「自筆証書遺言保管制度」を利用すると、法務局に自筆証書遺言の原本や画像データを保管してもらえます

    そのため、紛失や改ざんのおそれがなくなり、さらに検認の必要がなくなるというメリットもあるのです。

  2. (2)自筆証書遺言保管制度の利用方法

    「自筆証書遺言保管制度」を利用する方法について詳しくみていきましょう。

    ① 利用できる場所
    まず、自筆証書遺言が保管されているかどうか確認するためには「遺言書保管事実証明書」の交付を「遺言書保管所」(法務局)に請求する必要があります。「遺言書保管所」は全国に312か所あり、どこの遺言書保管所に対しても請求することが可能です。
    「遺言書保管所」に予約をした上で直接出向くか、郵送による請求を行います。
    自筆証書遺言の保管が判明した場合に行うのが「遺言書の閲覧請求」や「遺言書情報証明書の交付請求」です。
    「遺言書の閲覧請求」は、モニターでデータを閲覧する場合にはすべての遺言書保管所でできますが、原本を閲覧する場合は「原本が保管されている遺言書保管所」で行う必要があります。
    一方、「遺言書情報証明書の交付請求」では遺言書の画像データを印刷してもらうことができ、郵送や遺言書保管所(窓口)に行くなどの方法で、遺言書保管所に請求することが可能です。

    ② 検索できる内容
    「遺言書保管事実証明書」では「自筆証書遺言」が保管されているかどうかがわかります。「遺言書の閲覧請求」や「遺言書保管事実証明書の交付請求」では「自筆遺言書の内容」を知ることが可能です。
    遺言者が制度を利用していなければ、自筆遺言書の内容を当然検索することができません。

    ③ 利用できる人
    相続人や遺言執行者などの利害関係人やその代理人が利用することができます。

    ④ 利用にかかる費用
    「遺言書保管事実証明書の交付請求」には1通につき800円の手数料がかかります。
    「遺言書の閲覧請求」にかかる手数料は、モニターを閲覧する場合は1回につき1400円、原本を閲覧する場合には1回につき1700円です。
    また、「遺言書情報証明書の交付請求」は1通につき1400円の手数料がかかります。

3、生前に遺言を検索したいときは

遺言書を遺言者が生きている間に検索したい場合、「公正証書遺言」か「自筆証書遺言」かによって探し方が異なります。

それぞれみていきましょう。

  1. (1)公正証書遺言の場合

    遺言検索システムでは、前に述べたとおり、遺言者が生きている間には遺言者のみしか利用できず、利害関係人が利用することはできません。利害関係人がシステムを利用せずに探す方法として考えられるのが、公正証書遺言の正本・謄本を家の中から探すことです。

    公正証書遺言は、公証役場に原本が保管されていますが、正本・謄本は遺言者に交付されています。原本が公証役場で保管されていることから、正本・謄本を開封しても改ざんされるおそれがないため、中を見ることも可能です。

    公正証書遺言を遺言者の生前に探す場合は、保管されている可能性のある場所を探しましょう。

  2. (2)自筆証書遺言の場合

    自筆証書遺言保管制度も遺言検索システムと同様に、遺言者が生きている間に利害関係人が利用することはできません。また、自筆証書遺言保管制度を遺言者が利用していない場合でも、かかる制度を用いて検索することはできません。

    そのため、そのような場合には、家の中から遺言者が遺言書を保管していそうな場所を探してみましょう。
    ここで気をつけておかなければいけないのは、遺言書を見つけた場合に、遺言者が自筆証書遺言保管制度を利用していないこともあるため、「その場で開封してはいけない」ということです。自筆証書遺言保管制度を利用していない場合には家庭裁判所による「検認」が必要になります

    「検認」は、裁判所で裁判官と相続人の立ち会いのもと遺言書を開封して中身を確認することで、遺言書の偽造を防ぐ手続きです。もし仮に「検認」をする前に開封してしまった場合、5万円以下の過料を課せられる可能性もあります

    そのため、家で見つけた自筆証書遺言は開封しないように気をつけましょう。

4、遺言書の作成を弁護士に依頼するメリット

公正証書遺言も自筆証書遺言も検索をすることはできますが、自筆証書遺言は自筆証書遺言保管制度を利用しないと探しにくくなります。そのため、遺言書を作成する場合には「公正証書遺言」の作成がおすすめです

また、どちらの遺言書を作成する場合であっても弁護士に依頼するメリットがあります。詳しくみていきましょう。

  • 法的に有効な遺言書を作成できる
    自筆証書遺言を自分だけで作成する場合、不備があって無効になってしまうことがあります。弁護士に依頼することで、せっかく用意した遺言書が無効になることを防ぐことが可能です。

  • 相続財産を調べてもらうことができる
    遺言書を作成するためには、どのような財産がどのくらいあるのかを正確に認識する必要があります。弁護士に依頼すると、相続財産を調査してもらうことができる上、どのように分配するべきかアドバイスをもらうことも可能です。

  • 手続きの対応をしてもらえる
    公正証書遺言を作成する場合、公証人との打ち合わせをしなければいけません。弁護士に依頼しておくことで、公証人との打ち合わせ対応を任せることができます。

  • トラブルの対応をしてもらえる
    遺産相続では、遺言書があったとしても、遺留分が侵害されているなどの理由でトラブルが起きてしまうことがあります。弁護士に間に入って対応をしてもらうことで、トラブルを適切に解決できると期待できます。

5、まとめ

遺言書の検索方法は「公正証書遺言」か「自筆証書遺言」かによって異なります。
「公正証書遺言」の場合は「遺言検索システム」、「自筆証書遺言」の場合は「自筆証書遺言保管制度」を利用しましょう。

また、「自筆証書遺言保管制度」を利用しないで家に保管していたものを見つけた場合には「検認」をする前に開封してはいけません。

遺言書を作成する場合、法的に有効な遺言書を作成するためにも、遺産相続が発生したときに起きる可能性のあるトラブルを防ぐためにも、弁護士に依頼をしましょう。ベリーベスト法律事務所 山口オフィスの弁護士へご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています