電凸は威力業務妨害に問われるのか? 弁護士が解説

2024年07月29日
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電凸は威力業務妨害に問われるのか? 弁護士が解説

昨今、企業や官公庁等が不祥事を起こすと、抗議の電話が鳴りやまず業務にならないといったニュースを耳にする方も多いのではないでしょうか。

このように業務を妨害するような繰り返しの電話やクレーム、いわゆる「電凸(でんとつ)」と呼ばれる行為は、威力業務妨害罪に問われる可能性があります。「クレームを入れたつもりが刑事責任を問われてしまった」とならないためにも、電凸で問われうる刑事上の責任について、知っておくことが大切です。

電凸により逮捕されたらどうなるのかも併せて、ベリーベスト法律事務所 山口オフィスの弁護士が解説します。


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1、電凸とは

近年、企業や官公庁、マスコミ、病院などに繰り返し電話をする、いわゆる「電凸(でんとつ)」が問題となっています。

電凸とは、相手に繰り返し電話をかけ、意見を述べたり、見解を問いただしたりする行為をいいます。もともとは、インターネット上のネットスラングで、「電話突撃」が語源といわれています。

本来、電話をかけるだけでは、刑事責任を負うことはありません。しかし、何度も繰り返して問い合わせやクレームを行い業務を妨害した場合は、逮捕され有罪判決を受ける可能性があります。

たとえば、「繰り返し電話で恫喝をした」「必要以上のクレーム電話をした」「爆破予告をした」場合には、刑罰が科される可能性が高いです。

2、電凸を行ったことで、問われうる刑事上の刑罰

電凸を行うことで、どのような刑罰を受ける可能性があるのでしょうか。電凸により、問われうる罪について解説します。

  1. (1)威力業務妨害罪

    威力業務妨害罪(刑法234条)は、「威力を用いて人の業務を妨害した者」が処罰の対象となるため、電凸で問われうる罪のひとつです。

    「威力」とは、人の意思を制圧するに足りる勢力を示すことを意味します。たとえば、業務中の店の前で集団でたむろし、入店を妨げるような行為が「威力」にあたります。電凸もまた、何度も繰り返し電話をかけることで、電話口の被害者の意思を制圧し、意見をいえない状態にするに足りる行為となり得るため、「威力」にあたりうると考えられます。

    「業務」とは、職業その他社会生活上の地位に基づいて継続して行う事務又は事業のことをいいます。病院や企業の電話窓口は、その事務員が職業として、継続的に行う事務にあたるため、「業務」であるといえます。

    「妨害した」とは、実際に業務妨害が生じる必要はなく、業務を妨害するおそれがある行為であれば認められると判例上考えられています。そのため、繰り返し電話をかけ、本来他の電話も受け付けることができたはずが、電凸の対応に追われてしまった場合には「妨害した」といえます。

    このように電凸行為は、繰り返し電話をかけることによって(威力にあたりうる行為)、会社や病院、役所の業務を妨害する可能性が高いため、威力業務妨害罪が成立する可能性があります。

    威力業務妨害罪にあたると、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に科される可能性があります。

  2. (2)脅迫罪

    脅迫罪(刑法222条)は、「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者」を処罰の対象にしています。

    「脅迫」とは、人を畏怖させるに足りる害悪の告知をすることをいいます。たとえば、「ぶっ殺すぞ」「お前帰り道に気をつけろよ」「火をつけてやるからな」など聞いた者が怖がる言動をすると「脅迫」にあたります。

    電凸した際に、「殺すぞ」などと発言した場合はもちろん、「何を考えているんだ!」「どうなってるんだ!」など繰り返し怒号を発した場合にも、場合によっては「脅迫」にあたる可能性があります。

    脅迫罪にあたると、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処されることになります。

  3. (3)強要罪

    強要罪(刑法223条)とは、「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者」を処罰の対象にしています。

    電凸の場合、「社長を出せ」「謝罪しに来い」など怒号し、業務外の行為をさせようとすると強要にあたる可能性があります

    強要罪が成立すると、3年以下の懲役に処される可能性があります。

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3、逮捕されたらどうなる?

電凸行為による逮捕から刑事裁判まで、どのように進むのか、刑事事件の流れを解説します。

  1. (1)捜査が水面下で進み突然逮捕される

    電凸された役所や病院、企業等が被害届を提出すると、警察は捜査を開始します。

    電凸した犯人が特定されると、警察と裁判所の判断によっては、逮捕状の請求と発付が行われ、逮捕となります。逮捕状がある場合、警察署への同行を拒むことはできません。一般的に、逃走を防ぐため出社前の朝などに逮捕されることが多いといわれています。

    逮捕されると家族や会社に連絡する時間も与えられず、そのまま警察署へ連れていかれることになります。

  2. (2)警察署で取り調べを受ける

    警察に連行されると、電凸についての取り調べを受けることになります。

    取り調べの結果、犯人である可能性が高いと判断されると、検察官に送られ、さらに取り調べを受けることになります。

    逮捕から検察庁への送致まで、法律上、48時間以内と定められているため、最大2日間警察署で取り調べを受けます

  3. (3)検察庁で取り調べを受ける|最長20日間の勾留

    検察庁へ送致されると、起訴するかどうか判断するために本格的に取り調べがされることになります。検察庁へ送られてからの身柄拘束のことを「勾留」といいます。

    勾留された場合、検察の取り調べは、最長20日間続きます。この時点で弁護士に依頼をすることで、検察官の取り調べの際のアドバイスや身柄解放のための説得、意見書の提出など、積極的な弁護活動による早期解放が期待できます。

    しかし、このまま取り調べが続き、起訴する必要があると検察官が判断されると、刑事裁判になります。

  4. (4)起訴され裁判になる

    起訴されてしまうと、裁判所で犯罪事実はあるか、どのくらいの刑罰が妥当であるかなどが審理されることになります。

    電凸したと自白した場合には、情状事実以外裁判で争うことがないため、比較的早期に判決が言い渡されます。一方、無罪や電凸をしていないと主張した場合には、裁判が長期化することも考えられます。

  5. (5)有罪判決を受ける|刑務所に行く・前科がつく

    有罪が確定すると、刑務所に収容されます。ただし、3年以下の懲役で執行猶予がついた場合には、刑務所に行かずにすむことがあります。

    もっとも、有罪判決を受けると前科がついてしまいます。前科は公表されることはなく、一般的に他人に知られることはありませんが、就職や結婚の際などに不利になるおそれがあります。

    加えて、電凸で捕まった場合にはニュースなどで名前が出てしまい、ネット上にいつまでも自分の名前が残ってしまうリスクもあります。

  6. (6)逮捕される前に弁護士に相談する

    電凸で逮捕されると最終的に有罪判決を受け、前科がつく可能性があります。

    前科がついてしまうと今後の人生に大きな影響が出ることもあります。そのため、逮捕の可能性がある場合には、すぐに弁護士に相談しましょう。

    起訴前に解決できるか否かが刑事事件の大きなターニングポイントです。そのため、少しでも早く弁護士に相談して、逮捕や起訴前の解決を目指しましょう。

4、電凸したことで損害賠償を請求されることもある

電凸行為は、刑事責任だけではなく、民事責任として損害賠償請求されることがあります。

たとえば、繰り返し電話をかけて業務を妨害したことで企業が営業できなくなった場合には、経済上の実害が発生しています。そうした被害に対する損害賠償請求として、企業側が民事裁判を起こす可能性があります。

小規模の個人店であったとしても、1日あたり数十万円の損失が出ることがあります。大企業や大きなイベントの場合には、損害額はさらに甚大なものになり、個人で支払うことは困難である可能性が高いでしょう。

損害賠償を求められた際は、早期に弁護士に相談することをおすすめします

5、まとめ

電凸は、威力業務妨害罪に問われる可能性があります。そのため、電凸をしてしまい逮捕の不安がある方は、なるべく早く弁護士に相談するようにしましょう。逮捕される前に相談することで、迅速な示談交渉や弁護活動で逮捕の回避や起訴の可能性を軽減できる可能性が高まります。

ベリーベスト法律事務所 山口オフィスでは、刑事事件の解決実績がある弁護士がお一人おひとりの状況に合わせて最適な解決策を提案します。電凸で逮捕の不安がある場合、まずはお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています