私人逮捕は正義? 犯罪? 違法な暴行・監禁として逮捕される境界線

2026年01月05日
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私人逮捕は正義? 犯罪? 違法な暴行・監禁として逮捕される境界線

私人逮捕は刑事訴訟法で認められている行為ですが、場合によっては違法とみなされ、逆に逮捕されてしまう可能性があります。

令和6年3月には、私人逮捕の様子を動画で撮影・公開しているユーチューバーが、相次いで検挙されているとの報道がありました。

正しいと信じて行った私人逮捕が違法にあたる可能性があることを知り、不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本コラムでは、私人逮捕が認められる条件や罪に問われるケース・警察から連絡がきたときの対応などについて、ベリーベスト法律事務所 山口オフィスの弁護士が解説します。


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1、その私人逮捕、やりすぎ? 違法と適法の境界線

私人逮捕とは、警察官や検察官などではない一般の市民が、犯罪行為をした人を逮捕することです。私人逮捕は一定の条件を満たしていれば認められる行為ですが、その範囲を超えると違法とみなされる可能性があります

以下では、私人逮捕が認められる条件と、「正義」と「適法性」の違いについて解説していきます。

  1. (1)私人逮捕が許される2つの条件

    私人逮捕が適法と認められる条件は、主に以下の2つです。

    • 現行犯または準現行犯であること
    • 軽微な犯罪の場合は犯人の住所・氏名が不明又は逃走するおそれがあること


    まず、犯人が「現行犯人(犯罪中または直後の者)」か、「準現行犯人(犯行直後で犯人と疑うに足りる状況がある者)」でなければなりません。

    また軽微な犯罪である場合、私人逮捕ができるのは犯人の身元がわからない場合や、逃走のおそれがあるケースに限られます。軽微な犯罪とは、刑罰が「30万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、2万円)以下の罰金・拘留または科料」に該当する犯罪です。

    これらの条件に当てはまらない状況で私人逮捕を行うと、違法とみなされる可能性があります。

  2. (2)一般人が考える正義と法律上の適法性の違い

    私人逮捕において注意すべきなのは、「正義感で行ったこと」が適法とは限らない点です

    一般の方が正義感から行動したとしても、その行為が法律の条件を外れていれば違法行為として処罰対象になり得ます。たとえば、犯人を捕まえるという目的があっても、相手に暴力を振るったり長時間拘束したりすれば、罪に問われるおそれがあります。

    正義感からの行動で逆に加害者になってしまわないよう、法律で認められた範囲を理解しておくことが重要です。

2、あなたの行為は大丈夫? 逮捕監禁など罪に問われる5パターン

私人逮捕は法的に認められているとはいえ、やり方を間違えると逮捕される側に立場が逆転してしまいます。どのような行為が危険でどのような罪に問われうるのか、以下で具体的なNGパターンを確認していきましょう。

  1. (1)過剰な有形力

    相手を押さえつける力が必要以上であった場合、暴行罪や傷害罪に該当する可能性があります

    逮捕時に現行犯が暴れた場合、一時的に押さえつけるなどの実力行使は正当な行為として認められています。しかし、抵抗していない犯人に対して必要以上に暴行を加えると正当な制止ではなく暴力とみなされるのが一般的です。

    殴る・蹴る・胸ぐらをつかんで引っ張るなどの行為は、暴行罪に該当します。科されうる刑罰は2年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留、もしくは科料です。

    また、相手にケガを負わせた場合は傷害罪として、15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処される可能性もあります。

  2. (2)長時間の拘束

    犯人を取り押さえたあと、不必要に長い時間拘束すると、逮捕罪や監禁罪に問われる可能性があります

    私人逮捕をした際は、すぐに警察に通報して引き渡さなければなりません。不当な拘束とみなされて逮捕監禁罪が成立すると、3か月以上7年以下の拘禁刑の処罰対象となります。

    とくに、逮捕者を車や部屋に連れて行って拘束したようなケースでは、悪質と判断されやすくなるため注意が必要です。

  3. (3)不要な言動

    私人逮捕の際に不特定多数の人が認識できる状況で犯人を侮辱する言葉を使うと、侮辱罪にあたる可能性があります侮辱罪の法定刑は、1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留、もしくは科料です。

    また、私人逮捕の現場を撮影した映像や個人情報をネットで公開すると、名誉毀損罪に問われる可能性もあります名誉毀損罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金です。

    「世間に知らせたい」という感情があっても、刑事責任・民事責任のリスクがあるため言動には注意しましょう。

  4. (4)証拠が不確か

    「視線が怪しい」「挙動不審」など、確かな証拠がなく疑わしいだけの状態では現行犯や準現行犯にはあたりません

    証拠があいまいなまま取り押さえてしまうと不当な人身拘束とみなされ、逮捕監禁罪に問われるおそれがあります。

    また、正当な理由なく逮捕したことによって民事上の責任が生じ、損害賠償請求されるおそれもあるため注意が必要です。

  5. (5)軽微な犯罪

    侮辱罪や過失傷害罪といった軽微な犯罪で犯人の身元が明確になっている場合、基本的に私人逮捕は行えません

    法定刑が30万円以下の罰金・拘留・科料にあたる軽微な犯罪では、現行犯逮捕できるのは、犯人の身元がわからない場合や逃走のおそれがあるケースであるからです。

    現行犯逮捕の必要性がなければ私人逮捕は認められず、逮捕行為自体が違法とされます。違法な逮捕は逮捕監禁罪や暴行罪が成立しうるだけでなく、損害賠償責任も生じる可能性があるため注意が必要です。

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3、警察から連絡が来たらどうする? 人生を棒に振らない初期対応

私人逮捕をしたあとに警察から突然の連絡があれば、多くの方が動揺するものです。初期対応を間違えると自分の立場が一気に不利になってしまう可能性もあるため、慎重に判断しましょう。

以下では、警察から連絡がきたときに取るべき行動と絶対にやってはいけない行動を解説します。

  1. (1)警察から連絡がきたときの適切な対応

    警察から連絡がきたときの対応としてもっとも重要なのは、すぐに弁護士に相談することです。弁護士には、警察からの要請に応じるべきか、また今後どのように対応すべきかなどを相談できます。

    とくに、私人逮捕が違法と疑われているケースでは、逮捕監禁罪や暴行罪などに問われる可能性もあるため、早期の対応が不可欠です。

    自分が行った私人逮捕に不安がある場合は、できるだけ早めに弁護士に相談しておくと安心できるでしょう

  2. (2)絶対にやってはならないこと

    警察から連絡が来たときに絶対にやってはならないのは、無視や放置をすることです。連絡を無視してしまうと、以下のようなリスクがあります。

    • 勤務先や自宅の電話番号に連絡がくる可能性がある
    • 自宅に訪問される可能性がある
    • 逮捕につながる可能性がある


    警察からの連絡にすぐに出られなかった場合は、かけなおして用件を聞きましょう。その後の対応は弁護士に相談しながら検討することが望ましいです。

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4、相談を受けた弁護士ができること

自分の行った私人逮捕に不安がある場合や、警察からの連絡を受けた場合は、まず弁護士に相談しましょう。私人逮捕について相談を受けた弁護士ができることは、以下のとおりです。

  1. (1)私人逮捕の適法性を判断できる

    弁護士は、法的な観点から私人逮捕が適法であったかどうかを判断できます

    たとえば、相手が本当に現行犯だったのか、軽微な犯罪に該当していたかなど、丁寧に聞き取りを行います。この段階で違法の可能性があるとわかれば、今後どのように対応すべきかのアドバイスが可能です。

    まずは弁護士の視点からアドバイスを受けることで、無用なトラブルを防げるでしょう。

  2. (2)逮捕された場合に取り調べへの対応をアドバイスできる

    違法な私人逮捕を疑われて逮捕された場合は、すぐに弁護士に相談しましょう

    逮捕後の取り調べでは、不用意な発言やあいまいな表現が不利な内容として記録されてしまうおそれがあります。弁護士は、取り調べにおける黙秘権の行使や供述内容などについて具体的なアドバイスが可能です。

    逮捕されてしまった場合でも、弁護士のサポートがあれば状況を整理したうえで冷静に対応できるでしょう。

  3. (3)示談交渉や訴訟手続きを任せられる

    私人逮捕によって相手がケガをしたり、精神的苦痛を受けたりした場合、損害賠償請求や刑事告訴に発展する可能性があります。

    そのような場合でも、弁護士であれば示談交渉や訴訟手続きの代行が可能です。

    示談交渉や訴訟手続きは、法律知識のない一般の方がひとりで対応するのは困難です問題が深刻化する前に弁護士に相談しておくことで、被害の拡大を防ぎやすくなります

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5、まとめ

事件の現行犯や準現行犯は、警察や検察ではない一般の市民であっても、逮捕状なしで逮捕できます。しかし、私人逮捕をするには法律で認められた一定の条件を満たしていなければなりません。

私人逮捕の条件を満たしていなかったり、過剰な行動をしてしまったりすると、刑事責任や民事責任を問われるおそれがあります。

私人逮捕のことで不安がある場合は、まず弁護士に相談しましょう。弁護士は、適法性の判断や警察対応へのアドバイス、示談交渉や手続きの代行が可能です。

正義感からの行動で後悔しないためにも、悩んだときにはベリーベスト法律事務所 山口オフィスの弁護士にご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています