養育費を一括請求するデメリットは? メリットや計算方法、注意点
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養育費の支払いは、滞納や支払いがストップするなどのリスクも想定されます。
このような不安を抱えている方の中には、養育費を一括で請求したいと考える方もいるでしょう。しかし、養育費の一括請求は、メリットだけでなく、デメリットもありますので慎重に判断する必要があります。
今回は、養育費を一括請求するメリットやデメリット、一括請求をする際の計算方法と注意点について、ベリーベスト法律事務所 山口オフィスの弁護士が解説します。


1、養育費は一括請求できる?
そもそも養育費の一括請求はできるのでしょうか。以下では、養育費の一括請求の可否について説明します。
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(1)お互いの同意があれば養育費の一括請求も可能
養育費は、子どもが社会的・経済的に自立するまでに必要となる費用をいい、衣食住に必要な費用、教育費、医療費などが含まれます。このような日々必要になるお金という性質上、養育費は、基本的には毎月払いが原則となります。
しかし、養育費の支払い方法について法律上特別の定めがあるわけではありませんので、当事者がお互いに合意できるのであれば、養育費を一括請求することも可能です。 -
(2)調停や審判では養育費の一括請求は難しい
養育費の金額や支払い方法について、当事者同士の話し合いで合意に至らないときは、家庭裁判所に養育費請求調停の申立てを行います。
しかし、話し合いで一括請求に応じない相手は、調停でも応じない可能性が高いでしょう。また、養育費の支払いは、毎月払いが原則となりますので、一括払いを請求しても調停委員が積極的に相手を説得してくれることは期待できません。
調停が不成立になれば審判(裁判)により養育費の金額を定めることになりますが、審判や裁判では、特別な事情がない限り一括払いを認めていませんので、一括請求は極めて困難だといえます。
2、養育費を一括請求するメリット・デメリット
養育費を一括請求するメリット・デメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
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(1)養育費を一括請求するメリット
養育費を一括請求するメリットは、以下のとおりです。
① 養育費の未払いを防げる
養育費の支払いは、長期間に及びますので、毎月払いだと、途中で不払いになるリスクがあります。養育費は、子どもの生活に必要不可欠なお金ですので、養育費が不払いになると子どもとの生活に大きな支障が生じてしまいます。
養育費を一括請求できれば、養育費の未払いを防ぐことができますので、「きちんと養育費を払ってもらえるだろうか」という不安からも解放されます。
② 離婚後に元配偶者と連絡を取らなくてよい
毎月決められた日にきちんと養育費が支払われていればよいですが、支払いが遅れたり、金額に不足があったりするとその都度、元配偶者に連絡をして支払いの催促をしなければなりません。
特に、元配偶者からのDVやモラハラが原因で離婚をしたようなケースでは、離婚後にかかわりを持ちたくないと考える方も少なくありません。養育費の一括請求ができれば、支払い後は、元配偶者と連絡を取る必要はありませんので、精神的な負担から解放されるでしょう。
③ 経済的な不安を軽減できる
離婚後は、新たな住居への引っ越し、家具や家電の購入など大きな出費を伴います。特に、専業主婦だと離婚後すぐに仕事に就けるわけではありませんので、新たな仕事が見つかるまでの間は、これまでの貯蓄に頼って生活していかなければなりません。
しかし、離婚時に養育費を一括で受け取ることができれば、離婚直後の経済的な不安も軽減され、安心して新生活のスタートを切ることができます。 -
(2)養育費を一括請求するデメリット
養育費を一括請求するデメリットは、以下のとおりです。
① 将来的な養育費の合計よりも少なくなる可能性がある
養育費の一括請求となると、相手が支払うべき養育費の総額は、かなり高額になります。相手が請求額を一括で支払う経済的な余裕がない場合は、一括で支払う代わりに養育費の減額を求められる可能性があります。
また、養育費の一括請求をする際の計算方法の詳細は後述しますが、養育費の一括請求では、中間利息控除により、総額が毎月払いでもらったときの合計額よりも少なくなる可能性があります。
このように、養育費の一括払いでは、毎月払いに比べて総額が少なくなるというデメリットが生じます。
② 養育費が決定するまで時間がかかる
養育費の一括払いは、支払う側にとって一度に多額のお金を準備しなければなりませんので、毎月払いよりもハードルが高いです。離婚の合意ができているにもかかわらず、相手が一括払いに応じてくれないような場合、説得に時間がかかり、なかなか離婚できないというデメリットも生じます。
③ 養育費を追加で請求できない
養育費の毎月払いでは、相手の収入が上がった、自分の収入が下がったなどの事情があれば養育費の増額を求めることが可能です。また、子どもが怪我や病気で入院した場合や私立の学校への進学などにより学費の負担が増加したときも、追加の養育費の請求ができる可能性があります。
しかし、養育費の一括請求だと将来増額または追加の支払いが必要な事情が生じたとしても応じてもらえない可能性があります。養育費を一括で受けっとった場合、子どもが社会的・経済的に独立するまでに使い切ってしまわないよう、計画的にお金を管理していかなければなりません。
お問い合わせください。
3、養育費を一括請求する場合の計算方法や注意点
以下では、養育費を一括請求する場合の計算方法と注意点について説明します。
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(1)養育費を一括請求する場合の計算方法
養育費を一括請求する場合には、以下のような方法で計算を行います。
① 養育費の月額を合計する
まずは、現在のお互いの収入と子どもの人数・年齢に基づいて、基本となる養育費の月額を計算します。養育費の月額は、裁判所が公表している養育費算定表を利用すると、簡単に計算できますので、参考にするとよいでしょう。
② 養育費の合計金額から中間利息控除を差し引く
養育費の月額を計算したら、養育費の支払い終期までの月数を乗じて、養育費の総額を計算します。
もっとも、本来毎月払いでもらうはずの養育費を一括でもらうことになると、一括でもらった養育費を運用することで利益が生じますので、公平の観点からそのような利益を控除するために、「中間利息控除」を行います。
養育費の総額から本来の養育費の支払い期間に応じた中間利息控除を行ったものが、一括請求する養育費の金額になります。 -
(2)養育費を一括請求する場合の注意点
養育費を一括請求する場合には、以下の点に注意が必要です。
① 養育費の一括請求に関する離婚協議書を作成する
当事者間の話し合いにより養育費の一括請求の合意ができたときは、必ず離婚協議書を作成して、合意内容を離婚協議書に明記するようにしてください。
口頭での合意でも養育費の取り決めはできますが、それでは後から「一括払いの合意なんてしていない」などと言われてしまうリスクがあります。そのようなリスクを回避するためにも、養育費に関する取り決めはしっかりと書面に残しておきましょう。
② 贈与税が発生する可能性がある
離婚後に元配偶者から支払われる養育費は、扶養義務の履行として通常必要と認められる範囲のものについては、贈与税は課税されません。
しかし、養育費の一括払いとなると金額も高額となり、通常必要と認められる範囲のものとは評価できず、贈与税が課税される可能性があります。
4、養育費のトラブルは弁護士に相談を
養育費に関するトラブルでお困りの方は、弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)一括請求する養育費の金額を計算してもらえる
養育費の月額の金額は、養育費の算定表を利用することで、誰でも簡単に相場を把握することができます。しかし、一括請求をする場合、中間利息控除をしなければなりませんので、一般的な養育費の計算よりも複雑な内容となっています。
弁護士に相談をすれば、一括請求する際の養育費の金額を計算が可能なため、適正な金額を相手に請求することができます。 -
(2)相手の交渉を任せられる
離婚時に養育費の取り決めをする場合、養育費だけではなく離婚や慰謝料、財産分与など離婚に関するさまざまな事項を決めていかなければなりません。
自分で対応するのが難しいと感じるときは、弁護士に依頼するとよいでしょう。弁護士であれば、本人に代わって相手との交渉も任せられるため、精神的な負担を大幅に軽減することが可能です。また、交渉で解決できなかったとしても、調停や審判・裁判の手続きへもスムーズに移行することができ、最後まで安心して任せることができます。 -
(3)一括請求すべきかどうか判断してくれる
養育費の一括請求には、メリットだけでなくデメリットも存在します。メリットだけしか考えずに一括請求をしてしまうと、後から悔やむこともあるため、慎重に判断しなければなりません。
弁護士は、養育費の一括請求をするメリットとデメリットを踏まえて、一括請求をすべきかどうかを判断します。一括請求をするかどうかで迷っているときは、まずは離婚問題の実績がある弁護士にアドバイスをもらうとよいでしょう。
5、まとめ
養育費を一括請求することは可能ですが、毎月払いで支払われる養育費の合計金額よりも低くなるなどのデメリットがあります。養育費の一括請求について、詳しくは弁護士に相談するのがおすすめです。
養育費の一括請求をお考えの方は、まずはベリーベスト法律事務所 山口オフィスまでお気軽にご相談ください。離婚トラブルの解決実績がある弁護士が親身にサポートいたします。
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