不貞慰謝料の減額要素|減額が難しいケースや注意点について

2024年09月12日
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不貞慰謝料の減額要素|減額が難しいケースや注意点について

不貞をしたことが配偶者にバレてしまった場合、配偶者から不貞慰謝料を請求される可能性があります。不貞行為が事実であれば、不貞慰謝料の支払いを免れることは難しいですが、請求される慰謝料の額によっては慰謝料を減額できる可能性があります。

そのためには、どのような要素が不貞慰謝料の減額要素になるのかをしっかりと押さえておかなければなりません。

今回は、不貞慰謝料の減額要素や不貞慰謝料の減額交渉をする際の注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 山口オフィスの弁護士が解説します。


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1、不貞慰謝料は減額できる! 可能性のある7つの要素

以下の7つの要素のうちいずれかひとつでも当てはまる場合には、不貞慰謝料を減額できる可能性があります。

  1. (1)婚姻期間が短い

    婚姻期間の長短も不貞慰謝料の金額に影響を与える要素となります。婚姻期間が短い夫婦は、婚姻期間が長い夫婦に比べて、積み重ねてきた婚姻共同生活が短い点で、不貞行為による権利侵害の程度が低いと一般的に考えられていますので、慰謝料の減額要素となります。

  2. (2)不貞期間が短い・不貞行為の回数が少ない

    不貞慰謝料は、配偶者の不倫により被った精神的苦痛に対して支払われる金銭です。不貞行為の期間や回数が多くなればなるほど、その配偶者が被る精神的苦痛が大きくなりますので、それに比例して不貞慰謝料の金額も大きくなります。

    そのため、不貞期間が短い、不貞行為の回数が少ないなどの事案であれば、不貞慰謝料の減額要素となります。

  3. (3)不貞相手からすでに慰謝料の支払いを受けている

    不貞行為があった場合、不貞行為をされた配偶者は、不貞行為を行った配偶者とその相手方の双方に慰謝料を請求することができます。ただし、双方に請求できるといっても慰謝料の二重取りができるわけではありません

    そのため、不倫をされた配偶者が不倫相手からすでに慰謝料の支払いを受けている場合には、そのことを理由に慰謝料を減額することができます。

  4. (4)不貞を理由に離婚や別居をしていない

    不貞を理由に離婚や別居をしていない場合には、不貞により夫婦関係が破綻した程度は低いと一般的には考えられているため、慰謝料の減額要素となります。

    また、夫婦が離婚や別居に至っていない場合、不貞行為をされた配偶者が、不貞行為を行った配偶者に慰謝料を請求する場合、夫婦の家計は共通ですので、慰謝料の支払いをしても結局は、家計全体でみれば収支はゼロということなります。そのため、高額な慰謝料を請求しても意味がないとして、大幅な減額に応じてくれる可能性もあります。

  5. (5)不貞行為に消極的だった

    不貞行為を行った配偶者がその相手方から強引に誘われて不貞に至ったようなケースや相手が上司という立場を利用して不貞行為を迫ってきたようなケースでは、不貞行為への関与が消極的といえます。そのため、不貞慰謝料の減額要素となります。

  6. (6)不貞行為前から夫婦関係が破綻していた

    不貞慰謝料は、不貞行為により平穏な夫婦関係が破壊されたことにより生じる精神的苦痛に対して支払われるお金です。つまり、不貞行為と夫婦関係が破綻したこととの因果関係が必要です。そのため、不貞行為前からすでに夫婦関係が破綻していたという場合には、不貞行為によって夫婦関係が破壊されたとはいえませんので、慰謝料請求をすることができません。

    不貞前からすでに夫婦関係が破綻していたことは簡単には認められませんが、長期間の別居など、様々な事情をもとに、すでに夫婦関係が破綻していたと評価できれば、相手方からの慰謝料請求は認められません。

  7. (7)不貞慰謝料の消滅時効が成立している

    不貞慰謝料は、一定期間権利行使がない場合には、消滅時効により権利が消滅してしまいます。具体的な消滅時効期間は、以下のようになっています。

    • 不貞慰謝料として請求する場合:不貞行為および不貞行為の当事者を知ったときから3年、もしくは、不貞行為があったときから20年のうち、早く到来する時点
    • 離婚慰謝料として請求する場合:離婚したときから3年(ただし、不貞行為が原因で離婚せざるを得なくなったときに限る)


    不貞行為をされた配偶者が不貞行為を行った配偶者に対して不貞慰謝料を請求する場合、不貞慰謝料または離婚慰謝料のどちらで請求するかによって時効期間は変わってきます。いずれにしても、時効期間が成立すれば、時効の援用をすることで相手方からの慰謝料請求を拒むことができます。

2、こんなケースは不貞慰謝料の減額が難しい

慰謝料の減額要素があったとしても、相手方との間ですでに慰謝料の支払いについて合意してしまった場合には、後からその合意を覆すことは困難です。慰謝料の減額を考えているのであれば、安易に相手方との示談に応じてはいけません

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3、不貞慰謝料の減額を請求する方法・手順

不貞慰謝料の減額要素に当てはまる場合は、以下のような手順で不貞慰謝料の減額を求めていきます。

  1. (1)相手方からの請求内容を確認する

    相手方から不貞慰謝料の請求を受けた場合には、相手からの請求内容をよく確認しておきましょう。

    その際には、自身に慰謝料の減額要素があるか等を検討しましょう。

  2. (2)相手方と減額交渉を行う

    相手方からの請求内容を十分に確認できたら、次は、相手方との減額交渉を行います。減額交渉では、慰謝料の減額要素にあたることを相手方に対して丁寧に説明し、相手方の納得を得るよう努めなければなりません。

  3. (3)相手方と慰謝料の減額合意が成立したら合意書等を作成する

    相手方と減額交渉の結果、合意が成立した場合、口頭での合意だけで終わらせるのではなく、必ず合意書などの書面に合意内容を残しておくようにしましょう

    合意書などを作成しておけば、今後、慰謝料の金額や支払い方法などでトラブルが生じたとしても、「言った・言わない」の水掛け論を防ぐことができます。

  4. (4)減額に応じてもらえないときは調停や裁判を検討する

    相手方との交渉の結果、減額に応じてもらえないときは、調停や裁判の利用も検討してみるとよいでしょう。

    調停では、裁判所内での話し合いの手続きなので、慰謝料の算定に関するさまざまな要素を踏まえて、裁判所が考える適正な慰謝料額をベースとして話し合いが進みます。そのため、相手があまりにも高額な金額を請求している場合には、調停委員からの説得により減額に応じてくれる可能性があります。

    また、裁判では、裁判所が過去の裁判例などを踏まえて適正な慰謝料額を決定してくれますので、相手があまりにも高額な金額を請求している場合には、適正な金額まで減額することが可能です。

4、不貞慰謝料の減額交渉における注意点・重要なポイント

不貞慰謝料の減額交渉では、以下の点に注意が必要です。

  1. (1)慰謝料請求を無視して放置しない

    相手方から不貞慰謝料を請求されたときに、「支払いたくない」などの理由で相手の請求を無視してはいけません。

    相手方の請求を無視していると、相手方から裁判を起こされてしまい、本来交渉で早期解決できたはずの事案が裁判により時間と労力をかけて対応しなければならなくなります。また、請求を無視していることが不誠実な態度ととらえられて、慰謝料が増額するリスクもありますので注意が必要です

  2. (2)支払えないような金額で合意しない

    自分に非があるからといって、相手方の請求にすべて応じる必要はありません。反省の態度を示したいという気持ちも十分に理解できますが、そもそも支払えないような金額で合意してしまうのは、慰謝料の支払いが滞るリスクがあるため相手に対しても、かえって反省していないという風にとらえられかねません。

    万が一、慰謝料の支払いができなくなってしまうと、相手方から強制執行の申し立てをされ、預貯金や給料などを差し押さえられてしまうリスクもありますので注意が必要です。

  3. (3)示談書の内容をきちんと確認する

    相手方と示談に応じる際には、示談書の内容をきちんと確認することが重要です。

    示談書に記載されている慰謝料額や支払い方法、支払期限を確認するのは当然ですが、清算条項が設けられているかどうかの確認も忘れずに行いましょう。

    清算条項とは、お互いにこれ以上支払うお金がないことを確認する条項ですが、清算条項がない場合には、後から再び慰謝料請求されるリスクもありますので特に注意が必要です。

  4. (4)弁護士に相談する

    慰謝料の相場や減額要素の有無を判断するためには、専門的知識や経験が不可欠となりますので、相手方から不貞慰謝料の請求をされたときは、すぐに離婚問題の解決実績がある弁護士に相談するようにしましょう。

    弁護士から適切なアドバイスを受けたうえで交渉に臨めば、慰謝料の金額の減額の可能性もあります。また、示談する際にも弁護士に示談書のチェックをしてもらうことで、不利な条件で示談してしまうリスクを回避することもできます。

5、まとめ

不貞慰謝料は、さまざまな要素に基づいて金額が算定されますので、慰謝料の減額要素がある場合には、それを主張することによって慰謝料を減額できる可能性があります。

もっとも、どのような要素が減額要素になるかについては、個人で判断するのは難しいケースも多いため、相手から慰謝料を請求されたときはすぐに弁護士に相談するのがおすすめです。

ベリーベスト法律事務所 山口オフィスには、離婚、慰謝料問題の解決実績がある弁護士が在籍しております。不貞慰謝料の減額をお考えの方は、まずはお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています