「子どもが自立したら離婚」がよい? 成人まで待つメリットとは

2024年04月18日
  • 離婚
  • 離婚
  • 子どもが自立したら
「子どもが自立したら離婚」がよい? 成人まで待つメリットとは

山口県が公表している統計資料によると、令和3年(2021年)の山口県内の離婚件数は、1875件でした。同居期間別でみると同居期間が20年以上の夫婦が424件と最も多い数字となっています。

そのなかには、子どもの自立をきっかけに離婚を考えた夫婦も多いと思います。子どもがいる方は、「離婚をしたい」と考えても「子どもに迷惑をかけたくない」という思いもあることから、子どもが自立するまで離婚を控える方も少なくありません。

本コラムでは、子どもが自立するまで離婚を待つことのメリットとデメリットや、婚姻期間の長い夫婦が離婚する際の準備事項などについて、ベリーベスト法律事務所 山口オフィスの弁護士が解説します。

1、子どもが自立した場合に離婚するメリット・デメリット

まず、子どもが自立するまで離婚するのを待つことのメリットとデメリットを解説します。

  1. (1)子どもが自立した場合に離婚するメリット

    子どもが自立した場合に離婚するメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。

    ① 経済的不安の軽減
    子どもが自立する前に離婚をすると、子どもの生活費や教育費などの経済的不安が生じます。
    元配偶者から養育費の支払いを受けることはできますが、それだけでは満足いく生活を送ることができないこともあります。

    しかし、子どもが自立した後であれば、離婚をしたとしても自分の生活だけを心配すればいいため、子どもが自立する前に離婚した場合と比較すると、経済的不安は軽減されるでしょう。

    ② 子どもに関する離婚条件の取り決めが不要
    子どもがいる状態での離婚だと、親権、養育費、面会交流などの取り決めが必要になります。

    これらの離婚条件は、争いになることが多い項目ですので、子どもに関する離婚条件の取り決めが不要になることで、スムーズに話し合いを進めて離婚の合意を成立させやすくなります。

    ③ 子どもの精神的負担の軽減
    離婚をすると、子どもの生活環境は大きく変化することになります。
    それにより、子どもには精神的負担が生じてしまうこともあるかもしれません。

    子どもが自立した年齢になれば、親が離婚をしたとしてもそれを受け入れる心の余裕ができることから、子どもが受ける精神的負担が軽減されます。
  2. (2)子どもが自立した場合に離婚するデメリット

    子どもが自立した場合に離婚するデメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。

    ① 離婚するまで我慢が必要
    子どもの年齢によっては、子どもが自立するまで10年以上もかかることもあります。

    相手との生活に苦痛を感じていたとしても、子どもが自立するタイミングまで離婚を待つとなると、長い間我慢を強いられることになるでしょう。

    ② 両親が不仲だと子どもに悪影響が及ぶ
    両親が不仲だと、家庭内でもけんかや言い争いが絶えない状態になることもあります。
    そのような家庭環境だと子どもにも精神的負担をかけることになり、成長や発達に悪影響を与えるおそれもあるでしょう。

    ③ DVやモラハラの危害等が子どもに及ぶリスクがある
    配偶者からDVやモラハラを受けている場合には、子どもに危害等が及ぶリスクがあります。
    もちろん、子どもには暴力等を振るわないという配偶者もいると思います。しかし、いつその矛先が子供に向くか、という心配もあるかと思います。また、子どもは暴力等を振るう親を見て、悲しい気持ちになっている場合もあります。そのような場合には、子どもに悪影響を与えることにつながるでしょう。

2、押さえておきたい「親権」のこと

夫婦に子どもがいる場合には、離婚後の「親権」についてもしっかりと理解しておく必要があります。
以下では、親権の決め方や養育費について解説します。

  1. (1)離婚は子どもの親権が決定するまでは認められない

    夫婦に子どもがいる場合は、どちらか一方を親権者に指定しなければなりません。
    親権者が決まらなければ離婚届を提出しても受理されないため、子どもの親権が決まるまでは、離婚をすることもできないのです。

    夫婦のどちらも子どもの親権を希望している場合には、話し合いでの解決が難しくなり、離婚調停や離婚裁判にまで発展することもあります。

  2. (2)成人年齢の引き下げにより、18歳以上の子どもの親権は決定する必要がない

    令和4年4月1日から改正民法が施行され、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることになりました。
    以前は、20歳までの子どもがいる場合には離婚時に親権を決定する必要がありましたが、改正民法の施行後は、子どもが18歳以上になっていれば、親権を決める必要はありません。

    ただし、成人年齢が引き下げられたとしても、未成熟子にあたる場合には子どもが18歳以上になっていたとしても養育費の支払いが必要となります

  3. (3)親権に関わらず養育費の請求は可能

    養育費については「子どもの親権を獲得した親から非親権者に対して請求するものだ」と理解している方が多いでしょう。

    しかし、正確には、親権者ではなく子どもを監護している親から非監護親に対して請求するお金になります。
    親権者と監護権者は、基本的は一致しますが、別々に定めることも可能です。
    別々に定めた場合には、監護親に養育費を請求する権利があることに注意してください。

3、婚姻期間の長い夫婦は離婚前の事前準備が重要

子どもが自立してから離婚した夫婦の場合、婚姻期間はすくなくとも二十年前後はあるでしょう。
婚姻期間の長い夫婦が離婚する際には、事前の準備がとくに重要になります。

  1. (1)離婚後の生活費をしっかりと考える

    子どもの自立を待ってから離婚すると、ご自身の年齢も高齢になっていることが多いでしょう。
    とくに専業主婦(主夫)である場合には、子どもが自立してからの年齢では再就職先を探すのも難しいため、離婚後の生活に不安が生じることになります。

    このような不安を少しでも解消するためには、離婚時に適正な財産分与や年金分割を受けることが重要となります
    専業主婦であれば年金分割を請求することで、老後にもらうことができる年金を増やすことができますので、ある程度の収入を確保することができます。
    また、婚姻期間が長い夫婦では夫婦の共有財産も高額になりますので、適正な財産分与を受けることができれば、財産分与で得た財産を切り崩しながら生活していくことも可能です。

  2. (2)離婚時の財産分与に向けて調査をする

    離婚時に適正な財産分与を受けるためには、事前の準備が重要となります。

    夫婦であっても相手の名義財産をすべて把握しているわけではありません。
    相手の隠し財産を見抜くことができなければ、本来もらえるはずだった財産がもらえず、離婚後の生活が苦しくなるおそれもあります。
    そのため、離婚を切り出す前に相手の財産をしっかりと調査する必要があります

    また、財産分与によってどのように財産を分けるのかもあらかじめ考えておきましょう。
    とくに自宅が共有財産に含まれる場合には、現金や預貯金のように物理的に分割することができないため、「誰が住むのか」「ローンは誰が支払うのか」という点について検討しておく必要があります。

4、離婚問題を弁護士に依頼すべき理由

以下のでは、離婚問題に関するお悩みは弁護士に相談すべき理由を解説します。

  1. (1)離婚の条件を有利に進めやすい

    離婚にあたっては、親権、養育費、婚姻費用、慰謝料、財産分与、年金分割、面会交流などのさまざまな条件を取り決める必要があります。
    法律に関する知識のない方では、のような方法でどのような内容を取り決めればよいかがわからず、不利な条件であるにもかかわらずそれに応じてしまうリスクがあります。

    弁護士であれば、法律の知識やこれまで離婚の案件を扱ってきた経験に基づいて、夫婦の状況に応じた適正な条件や相場を判断することができます
    また、相手が不当な要求をしてきたとしても、法的な観点に基づいてしっかりと拒絶することができます。
    「すこしでも有利に離婚を進めたい」という場合には、弁護士のサポートを受けましょう。

  2. (2)相手と直接交渉する必要がない

    離婚をする際には、まずは相手との話し合いが必要になります。
    しかし、離婚間近の夫婦では、関係性が悪化しているため、まともに話し合いをするのが難しいこともあります。

    弁護士であれば、本人に代わり相手と交渉をすることができるため、自身で直接対応する必要がなくなります。
    相手と顔を合わせて話し合わなければならないという精神的負担から解放されますので、ひとりで対応するのが不安だという方は、弁護士に依頼しましょう。

  3. (3)取り決めるべきことを漏らすことなく決められる

    離婚時に取り決めるべき内容にはさまざまなものがあり、夫婦によってその内容は異なります。
    万が一、取り決めるべき内容に漏れがあってしまうと、離婚時の清算条項や時効によって相手に対して請求することができなくなってしまいます
    重要な条件について漏れがあると、離婚後の生活にも大きな支障が生じてしまうため、慎重に進めていく必要があるのです。

    弁護士に依頼すれば、必要な事項を漏らすことなく取り決めることができます。

5、まとめ

子どもが自立するまで離婚するまで待つことには、子どもへの精神的負担やご自身の経済的負担を軽減できるなどのメリットがある一方で、夫婦が高齢になってからの離婚に伴うデメリットも存在します。
熟年離婚の場合には、財産分与も複雑になるため、適切な条件で離婚をするためには専門家である弁護士のサポートを受けることが大切です

「子どもが自立したら離婚をしたい」と検討されている方は、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています