家からの追い出しは悪意の遺棄になる? 証明方法や慰謝料請求を解説

2024年10月17日
  • 離婚
  • 悪意の遺棄
  • 追い出し
家からの追い出しは悪意の遺棄になる? 証明方法や慰謝料請求を解説

離婚前、まだ協議中にもかかわらず、相手から家を追い出されてしまうというケースがあります。

このように、正当な理由なく相手を追い出す行為は、法定離婚事由の一つである「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。なぜなら、離婚が成立するまでは、夫婦としての同居義務があるからです。

家からの追い出しがあった場合、怒りや困惑を覚える方が多いでしょう。しかし、離婚に関しては有利に進められる可能性がありますので、「悪意の遺棄」に該当する事情とその証明方法をしっかりと押さえておきましょう。

今回は、家からの追い出しが悪意の遺棄にあたるか、悪意の遺棄の立証方法などについて、ベリーベスト法律事務所 山口オフィスの弁護士が解説します。


離婚・男女問題を山口の弁護士に相談 離婚・男女問題を山口の弁護士に相談

1、悪意の遺棄とは?

悪意の遺棄とは、正当な理由なく、夫婦の基本的な義務である、同居義務・協力義務・扶助義務を履行しないことをいいます。このような悪意の遺棄は、民法が定める5つの法定離婚事由のうちのひとつとなります。

法定離婚事由とは、裁判離婚をする際に必要とされる事由で、法定離婚事由のいずれかに該当する事情がなければ裁判で離婚をすることはできません。

すなわち、悪意の遺棄に該当する事情があれば、相手が離婚を拒否していたとしても、裁判で離婚することができるということです。

2、家からの追い出しは、悪意の遺棄にあたる可能性

では、配偶者から家の追い出しがあった場合、悪意の遺棄に該当するのでしょうか。以下で詳しくみていきましょう。

  1. (1)家からの追い出しは悪意の遺棄にあたる可能性あり

    家からの追い出しは、夫婦の一方に別居を強いる行為と評価できます。

    夫婦には、法律上同居義務があります。そのため、正当な理由なく家を追い出し別居を強いることは、同居義務に反する行為として、悪意の遺棄とみなされる可能性があります。

  2. (2)悪意の遺棄になり得るその他の行為

    家からの追い出し以外にも以下のような行為があれば、悪意の遺棄にあたる可能性があります。

    ① 配偶者の同意なく家から出ていく
    家族を家に残して自分だけ家から出ていくことも、場合によっては悪意の遺棄になりうる行為のひとつです。

    夫婦には同居義務がありますので、正当な理由がない限りは、一緒に生活しなければなりません。たとえば、DVやモラハラなどにより同居が耐えられなくなったなどの事情もないのに、配偶者の同意なく家から出ていき、生活費を払わず家族を放置する行為には正当な理由がないと認められる可能性がありますので、このような場合は悪意の遺棄に該当する可能性があります。

    ② 愛人と同棲している
    相手が家を出ていって愛人と同棲しているような場合、悪意の遺棄に該当するとともに別の法定離婚事由である「不貞行為」にも該当する可能性があります。

    愛人と同棲するというのは、単に夫婦が別居をしている場合と比べて、より悪質性が高いケースといえますので、悪意の遺棄が認められる可能性が高いでしょう。
まずはお気軽に
お問い合わせください。
電話でのお問い合わせ
【通話無料】平日9:30~21:00/土日祝9:30~18:00
メールでのお問い合わせ一覧
営業時間外はメールでお問い合わせください。

3、悪意の遺棄に該当しないケース

夫婦が別居することになったとしても、以下のようなケースでは、悪意の遺棄に該当しない可能性が高いです。

  1. (1)単身赴任など別居しなければならないケース

    別居の理由が単身赴任である場合には、正当な理由があります。そのため、悪意の遺棄には該当しません。

    単身赴任は、仕事の都合上、家族と離れて暮らさなければならない状態ですので、本人が婚姻関係の破綻を意図してあえて別居したものと評価できないからです。

  2. (2)出産や病気の療養など一時的な別居

    出産や病気の療養などを理由に一時的に別居する場合も正当な理由がありますので、悪意の遺棄には該当しません。

    ただし、出産や療養を終えて同居に支障がない状態になっているにもかかわらず、家に戻らない場合、その時点から悪意の遺棄があったと評価される可能性もあります。

  3. (3)子どもの教育に必要な別居

    子どもが遠方の学校に通学する場合、子どもの負担を軽減するために自宅とは別に通学に便利な場所に家を借りて生活するケースがあります。

    このような場合、外観上は夫婦の別居という形になっていますが、子どもの教育のために必要な別居という正当な理由がありますので、悪意の遺棄に該当することはありません。

  4. (4)婚姻関係が破綻しているなど正当な理由がある別居

    婚姻関係が破綻した夫婦だと、一緒に生活するのが苦痛に感じることもあるでしょう。このような場合には、離婚を前提として別居をすることがあります。

    婚姻関係が破綻した状態での別居であれば、正当な理由がありますので悪意の遺棄には該当しません。しかし、婚姻関係が破綻しているかどうかは評価が難しい面もありますので、相手に無断で別居をしてしまうと、相手から悪意の遺棄だと主張されるリスクがあります。

    そのため、離婚を前提に別居する際には、相手と別居について話し合いを行い、できる限り相手の同意を得たうえで別居するようにしましょう

  5. (5)別居しても生活費を支払われている

    悪意の遺棄に該当するかどうか微妙なケースでは、生活費の支払いの有無も踏まえて判断されることがあります。夫婦には、離婚が成立するまでは互いに扶助する義務がありますので、収入の多い方が少ない方に対して生活費を渡す必要があります。

    別居中も生活費が支払われているのであれば、扶助義務を履行しているといえますので、悪意の遺棄にあたらない可能性があります。

4、悪意の遺棄をされたら慰謝料を請求できる?

悪意の遺棄をされた場合、相手に対して慰謝料請求することができるのでしょうか。

  1. (1)悪意の遺棄をされたら慰謝料請求可能

    悪意の遺棄があった場合、民法上の不法行為に該当しますので、悪意の遺棄をした相手に対して、慰謝料を請求することができます。

    慰謝料の金額は、ケース・バイ・ケースですが、一般的な相場としては50~300万円程度になります。実際には、婚姻期間の長さ、子どもの有無、行為の悪質性などを考慮して、金額が決められます。悪意の遺棄以外にも不貞行為、DV、モラハラなどの事情があれば、慰謝料の金額も高額になります。

  2. (2)悪意の遺棄を証明するには証拠が重要

    悪意の遺棄を理由に慰謝料を請求するのであれば、あらかじめ十分な証拠を確保しておくことが重要です。

    特に、家からの追い出しを理由に慰謝料請求をする場合、相手からは、「追い出しではなく家出だ」などと反論されることが予想されます。家出ではなく追い出しであるというためには、ご自身の主張だけでは足りずそれを裏付ける証拠が必要です。

    悪意の遺棄の証拠としては、以下のものが挙げられます。

    悪意の遺棄を立証するための証拠になりうるもの
    • 追い出しの状況などを残した日記
    • 相手から「出ていけ」、「戻ってくるな」などといわれたメールやLINE
    • 自宅にチェーンをかけられて入れないようにされた状況の写真や動画
    • DVや侮辱があったことがわかる動画や日記
    • 生活費をもらっていないことを示す通帳コピー


    悪意の遺棄を立証する証拠は、ひとつだけでなく複数あった方が立証しやすくなりますので、たくさんの証拠を集めておきましょう

5、まとめ

離婚が成立する前に、配偶者から家を追い出された場合、正当な理由なく同居を拒んでいるとして、悪意の遺棄にあたる可能性があります。

悪意の遺棄が認められれば、法定離婚事由に該当しますので相手が離婚を拒否していたとしても、裁判により離婚することが可能です。また、悪意の遺棄をした相手に対して慰謝料を請求することもできます。

ただし、悪意の遺棄を理由として離婚・慰謝料請求をするためには、悪意の遺棄を裏付ける証拠が必要になります。まずは弁護士に相談し、どのような証拠が有効かアドバイスしてもらうとよいでしょう。

家から追い出され、離婚を検討中の場合には、離婚トラブルの解決実績がある弁護士のサポートが有効です。まずはベリーベスト法律事務所 山口オフィスまでご相談ください。状況について親身にお話を伺います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています