離婚後に出て行かない元妻・元夫の対処法と弁護士に相談するメリット
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山口県が公表している「保健統計年報」によると、令和4年(2022年)の山口県の離婚件数の総数は、1757件でした。山口市は、245件で、県内で3番目に多いエリアになります。
無事、離婚が成立したとしても、元夫や元妻が家から出て行ってくれずトラブルとなるケースがあります。
元配偶者に家から出て行ってもらう方法、追い出す際の注意点、弁護士に相談するメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所 山口オフィスの弁護士が解説します。


1、離婚後に出て行かない元配偶者との同居義務
離婚が成立した場合には、夫婦関係は終了します。同時に、夫婦にあった同居義務や扶養義務も消滅するため、離婚した元配偶者と一緒に生活する義務はなくなります。
ただし、離婚後に出ていかない元配偶者に対して、「家から出て行ってくれ」と請求するためには、その家の全部の所有権をあなたが有している必要があります。
もし、自宅が夫婦の共有財産である場合には、財産分与をするまでは、原則として相手にも2分の1の持ち分があることになります。そのため、元配偶者は自宅の所有権を持っているため、当然に「出て行け」と言うことはできないのです。
ただし、独身時代に購入した自宅やあなたが親から相続や贈与によって取得した自宅については、財産分与の対象ではありませんので、この場合には、すぐに相手に出て行かせることができます。
2、離婚後、元配偶者に家から出て行ってもらう方法
離婚後、あなたが所有している自宅にもかかわらず、元配偶者が出て行ってくれない場合、どうすればいいのでしょうか。
ここでは、元配偶者に家から出て行ってもらう具体的な方法について解説していきます。
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(1)元妻や元夫との話し合い
離婚後に元妻や元夫があなたの家から出て行ってくれない場合、まずは当事者で話し合いを行うことになります。
元配偶者に対しては、「あなたはこの家に関して何の権利も持っていないこと」や、「居座り続けるようなら法的措置に出ざるを得ないこと」を明確に告げる必要があります。相手が任意で退去に応じる場合には、期限を設けて引っ越しを完了してもらいましょう。
話し合いによって相手が自発的に家から出て行ってくれる場合には、以下で解説するような強硬な手段に出る必要はなくなります。 -
(2)内容証明郵便の送付
自宅に居座っている元配偶者が話し合いに応じない場合や、一向に自体が前進しない場合には、内容証明郵便を送付します。
内容証明郵便は、送った内容・相手などを記録し、証拠として残せる郵便局の有料サービスです。同じ住所に住んでいる相手にも送付が可能です。
内容証明郵便には、次のような内容を記載します。- 自宅の所有権は、自分が有していること
- 元配偶者は自宅に関して何らの権利を有していないこと
- 自宅の所有権に基づき、早期に明け渡すこと
- 請求を無視する場合には、調停や訴訟など法的な手段を講じること
内容証明郵便の送付だけで、法的な効果が発生することはありません。しかし、調停や訴訟手続きに発展した場合、請求の事実やその内容について内容証明郵便で証明することができます。
なお、内容証明郵便が家に届けられた際は、ご自身で受け取らず、配達人から配偶者に手渡しされるよう気を付けましょう。 -
(3)離婚後紛争調整調停
内容証明郵便で請求しても効果がない場合には、離婚後紛争調整調停を利用するとよいでしょう。
離婚後の紛争調整調停とは、離婚後の紛争について当事者間の話し合いがまとまらない場合に利用できる、家庭裁判所の調停手続きです。この手続きにより、元配偶者の退去や、私物を自宅から撤去することを求めたりすることができます。
調停では、家庭裁判所の裁判官と一般市民の中から選ばれた2名の調停委員が、当事者の間に入って話し合いを進めることになります。調停が成立した場合には、合意された内容で調停調書が作成されます。 -
(4)建物明け渡し請求訴訟の提起
調停手続きによっても相手が家から出て行かない場合には、建物明渡し請求訴訟を提起します。建物明渡し請求訴訟とは、被告が無権限で建物を占有している場合に、強制的に明け渡しを実現させるための民事訴訟です。
訴訟を提起した場合には、最終的には裁判所が判決によって請求の可否を判断することになります。裁判を起こす際には、弁護士に相談したうえで、訴訟対応を進めることをおすすめします。
お問い合わせください。
3、元配偶者を家から追い出す際の3つの注意点
元配偶者を家から追い出したい場合、どのようなことに注意しておく必要があるのでしょうか。ここでは、元配偶者を家から追い出す際の3つの注意点を解説していきます。
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(1)家の財産分与を済ませる
財産分与とは、夫婦で築いた共有財産を公平に分け合う制度です。婚姻中に購入した自宅は、夫婦で協力して築いた財産とみなされるため、たとえ一方が名義人だったとしても、財産分与の対象となります。この場合、相手を追い出すことができません。
相手に自宅からの退去を要求するためには、まずは財産分与を済ませ、自宅の単独所有権を確定させる必要があります。 -
(2)暴力や暴言で強制的に追い出してはいけない
相手が家から出て行かないとしても、暴力や暴言で強制的に追い出してはいけません。
相手が無権限で自宅に居座っていたとしても、暴力や暴言で無理やり追い出してしまうと、逆にあなたが刑事告訴されてしまうリスクがあります。法律は自力救済(個人の力で争いを解決しようとすること)を禁止していますので、強制的に相手を家から追い出すためには、勝訴判決を得たうえで、強制執行をする必要があります。 -
(3)許可なく元配偶者の荷物を処分するのは違法
許可なく元配偶者の私物や荷物を処分するのは違法となります。
裁判で明け渡し命令が出たとしても、相手の所有物を勝手に処分してしまうと、逆にあなたが損害賠償請求されてしまうリスクがあります。
深刻なトラブルに発展させないよう、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
4、離婚後のトラブルを弁護士に相談するメリット
離婚後のトラブルについては、弁護士に相談すべきなのでしょうか。
ここでは、離婚後のトラブルを弁護士に相談するメリットについて解説していきます。
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(1)トラブルを解決するための最適な方法がわかる
弁護士は、離婚後のトラブルを解決するための最適な方法を提案します。自宅の財産分与が済んでいないのであれば、まずは財産分与を完了させる必要があります。自宅を単独所有しているのに、相手が退去に応じないという場合には、調停や訴訟を起こす必要があります。
弁護士に相談することで、現在の状況に応じた適切な解決策を知ることができ、同時に手続きのサポートも受けることができます。 -
(2)元妻や元夫との交渉を任せられる
弁護士は代理人としても対応します。元妻や元夫との交渉が難しい場合、離婚した元配偶者とはできるだけ関わりたくないという場合は、相手と直接やりとりを回避することができます。
また、調停や訴訟に発展した場合であっても、出廷や証拠の提出など必要な裁判手続きについても任せることができるため、時間な負担も減るでしょう。 -
(3)精神的な負担を軽減できる
弁護士に任せておくことで、精神的な負担を軽減することができます。離婚後のトラブルをご自身で対応することに強い心理的なストレスを感じる方は少なくありません。
分からないことや不安なことを弁護士に相談し、必要な手続きを任せることで、ご本人の心理的なストレスの軽減が期待できます。
5、まとめ
離婚後は元夫と同居する義務はないため、一緒に住む必要はなくなります。ただし、家の権利を完全に保有していない場合は、無理に元夫を追い出そうとすると、トラブルに発展するリスクがあるため、弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 山口オフィスには、離婚後トラブルの解決実績のある弁護士が在籍しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています