残業代請求されたら? 従業員への対処法や注意点を弁護士が解説

2025年08月28日
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残業代請求されたら? 従業員への対処法や注意点を弁護士が解説

労働基準法により、企業は残業をした従業員に対して、残業代を支払う義務が課されています。そのため、従業員から残業代請求をされたときは、無視することなく誠意をもって対応しなければなりません。

ただし、従業員が請求する残業代が、必ずしも正しい金額とは限らないでしょう。そのため、残業代を請求されたら、まずは内容や金額などを法的観点から精査したうえで、具体的な対応を考えていくべきです。

今回は、従業員から残業代請求されたときの対処法や注意点について、ベリーベスト法律事務所 山口オフィスの弁護士が解説します。

1、残業代請求されたら支払う必要がある?

従業員から残業代請求をされた場合、会社として残業代を支払うべきかどうか、詳しく解説します。

  1. (1)会社には法律上残業代の支払い義務がある

    労働基準法37条では、法定労働時間を超えて従業員に労働をさせた場合に、割増賃金を支払うことが定められています。この割増賃金は、一般的に「残業代」と呼ばれます。つまり、企業が従業員に残業代を支払うことは、法律上の義務です。

    そのため、未払い残業代があることを示す証拠がある場合には、従業員からの請求に応じて残業代を支払わなければなりません

  2. (2)従業員からの残業代請求が認められた裁判例

    従業員からの残業代請求が認められた裁判例としては、以下のようなものがあります。

    ① 東京地裁立川支部令和5年8月9日判決
    この事件は、引っ越し会社に勤務する従業員が、時間外労働における割増賃金などの未払いを主張し、会社に対して支払いを求めた事案です。
    裁判では、従業員側の主張が認められ、合計約950万円の残業代と約620万円の付加金の支払いが命じられました。

    ② 東京地裁令和5年3月29日判決
    この事件は、運送会社にトラック運転手として勤務する従業員が、時間外労働における割増賃金などの未払いを主張し、会社に対して支払いを求めた事案です。
    裁判では、従業員側の主張が認められ、約820万円の残業代と約620万円の付加金の支払いが命じられました。

    ③ 東京地裁令和5年3月3日判決
    この事件は、多業態型レストランチェーンを経営する会社において、戦略本部の課長職として勤務する従業員が、時間外労働における割増賃金などの未払いを主張し、会社に対して支払いを求めた事案です。
    裁判では、従業員側の主張が認められ、約850万円の残業代と約650万円の付加金の支払いが命じられました。

2、残業代請求された場合の対処の流れ

従業員から残業代請求をされたときは、以下のような流れで対応していきましょう。

  1. (1)残業代請求に反論できないか検討する

    会社には、残業代を支払わなければならない法的な義務があります。しかし、従業員からの残業代請求をすべて受け入れて応じなければならない、というわけではありません。

    従業員から残業代請求をされたときは、請求内容を精査して、反論の余地があるかどうかを検討するようにしましょう

    たとえば、請求内容が、実際に法定労働時間を超えた労働分の残業代にあたるのかどうか、タイムカードなどと照らし合わせるといった対処法があります。

  2. (2)従業員と会社で、残業代の計算に差異がないか確認する

    従業員からの残業代請求の内容を精査した結果、残業代請求に法的根拠がある場合には、残業代の支払いに応じなければなりません。

    ただし、従業員が請求する残業代の金額が正しいとは限りません。そのため、会社側でも請求金額に間違いがないか、計算するようにしてください。従業員から請求された残業代と会社側で計算した残業代に差異が生じたときは、どちらの計算が正しいのかを精査していくことになります。

  3. (3)和解または反論するか検討する

    従業員からの残業代請求に対し、会社は反論のほか、和解する選択肢もあります。
    従業員による残業代請求が法的に正当なものであれば、反論を行い裁判となった場合でも、判決で残業代の支払いを命じられる可能性が高いでしょう。そのため、基本的には和解を前提として、従業員との交渉を進めていきます

    一方、従業員による残業代請求に法的根拠がない場合や、残業代計算に誤りがある場合には、「残業代の支払いには応じられない」「請求額に誤りがある」などと反論をしていきましょう。

  4. (4)従業員との話し合いによって解決を目指す

    従業員からの残業代請求に対する会社側の方針が決まったら、和解でも反論でも、まずは従業員との話し合いによる解決を目指します。

    また、従業員による残業代請求に法的根拠があれば、早期解決の観点から、会社側は一定の譲歩を示すことも必要になるでしょう。

  5. (5)解決できない場合は労働審判や訴訟に対応する

    従業員との話し合いで解決できなければ、従業員側から労働審判の申し立てや訴訟の提起がなされるでしょう。会社としては、そのような法的手続きに対応していかなければなりません。

    労働審判や訴訟において、会社側は証拠に基づいて反論をしていきます。会社側の主張を裏付ける証拠がある場合には、あらかじめ準備しておくことが大切です

  6. (6)弁護士に相談する

    従業員による残業代請求には、さまざまな法的な論点が含まれているでしょう。それらに対応するには、法的知識や経験が不可欠です。

    もし、誤った対応をしてしまうと、不利な状況に追い込まれるリスクになりかねません。残業代を請求された際は、なるべく早い段階で専門家である弁護士に相談することをおすすめします

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3、残業代請求された場合の注意点

従業員から残業代を請求されたときは、以下の点に注意が必要です。

  1. (1)残業代請求を無視してはいけない

    従業員から残業代を請求されたら、残業代請求に法的根拠がなかったとしても、無視してはいけません

    従業員からの残業代請求を無視すると、後日従業員から労働基準監督署に通報され、立ち入り調査に応じなければならないリスクが生じます。さらに、労働審判の申し立てや訴訟提起をされるおそれもあるでしょう。このような事態に陥ると、かえって時間と手間をかけて対応していかなければならなくなります。

    不当な請求であっても、無視をせず誠意をもって対応することで、リスクを最小限に抑えることが可能です

  2. (2)労働基準監督署の調査には適切に対応する

    残業代の未払いがあると、従業員からの通報により、労働基準監督署の立ち入り調査が入る可能性があります。

    残業代の未払いは労働基準法違反となるため、調査の結果、未払い残業代の存在が明らかになれば、指導や是正勧告がなされます。万が一、労働基準監督署による調査や是正勧告を無視すると、企業名を公表されたり、刑事罰の対象になったりするおそれがあるでしょう。そのため、労働基準監督署の調査には、適切に対応すべきです

  3. (3)残業代請求の時効を確認する

    残業代請求権には時効があります。給料日の翌日から3年が経過し、会社側から時効が消滅したことを主張する「時効の援用」をしていれば、従業員からの残業代請求に応じる必要がなくなります。

    そのため、残業代請求の内容を精査するときは、そもそも残業代請求権が時効になっていないかどうかも確認することが重要です

4、労働問題を弁護士に相談するメリット3つ

残業代請求など、従業員との労働問題については、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談するメリットを3つ紹介しましょう。

  1. (1)残業代請求されないための対策を立てることができる

    弁護士というと、企業法務においてトラブルが生じてから依頼するイメージがあるかもしれません。しかし、トラブルを予防する「予防法務」も、弁護士の重要な役割のひとつです

    顧問弁護士がいれば、労務についての法的問題点を指摘、改善することができます。それにより、そもそも従業員から残業代を請求されない体制を整備することも可能です。

    従業員からの残業代請求には、手間も時間も、経済的負担もかかります。それらを未然に防ぐためにも、顧問弁護士を利用するのがおすすめです

  2. (2)弁護士であれば従業員との交渉ができる

    残業代を請求された場合、その内容を精査したうえで、従業員との交渉を行わなければなりません。残業代請求の対応に貴重な人員を割くことになれば、本来の業務に支障が生じてしまい、企業としても大きな損失となるでしょう。

    弁護士は、会社の代理人として従業員と交渉可能なため、会社側の負担を大幅に軽減できます。また、弁護士であれば、法的観点から適切な反論をすることができるため、従業員からの不当な請求を排除することも可能です。

  3. (3)訴訟などに発展した場合でも弁護士であれば対応可能

    従業員との交渉では解決に至らない場合、従業員から労働審判の申し立てや訴訟提起がなされる可能性があります。

    しかし、弁護士であれば、交渉から引き続き労働審判や訴訟の対応を行うことが可能です。このような法的手続きは、専門的知識や経験が不可欠ですが、専門家である弁護士であれば適切に対応できます。

5、まとめ

従業員から未払い残業代を請求されたら、その請求が妥当かどうか、反論する余地があるかなどを検討しなければなりません。また、残業代請求の内容を検討する際には、法的観点からの検討が不可欠です。そのため、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

話し合いで解決できない場合には、労働審判や訴訟に発展するおそれがあります。従業員との話し合いによる解決が困難なときは、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

労務や労働者とのトラブルでお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所 山口オフィスまでお気軽にご相談ください。

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