忌引きなのに休めない! 忌引き休暇を使わせてくれない会社に対してとれる対応
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家族や親戚に不幸があったら、葬儀等に出席するために仕事を休む必要があるでしょう。
多くの会社では「忌引き休暇」という制度が設けられているため、忌引き休暇を取得することで、不慮の事態にも対応することができます。しかし、もし会社に忌引き休暇という制度が存在しない場合には、どのように対応したらよいでしょうか。
本コラムでは、会社が忌引き休暇を使わせてくれない場合や会社に忌引き休暇制度が存在しない場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所 山口オフィスの弁護士が解説します。
1、「忌引き休暇」とはなにか
「忌引き休暇」とは、労働者の家族や親戚が亡くなった場合に、葬儀や通夜などに出席するために取得できる休暇のことです。
多くの企業が忌引き休暇制度を設けていますが、その内容は、企業によって異なります。
また、企業によっては、慶事や弔事があったときに、それぞれ休暇が取得できる「慶弔休暇」という名称で休暇制度を設けている場合もあります。
一般的には、亡くなられた方と労働者本人との続柄が何親等かによって休暇日数が変わり、親等数が小さいほど休暇日数が長く設定されています。
2、社内規程で忌引き休暇が設けられていない可能性もある
会社によっては、忌引き休暇制度が設けられていないこともあるので注意してください。
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(1)忌引き休暇は法律上の制度ではない
労働基準法では労働者の休暇について定められていますが、そのなかに忌引き休暇に関する規定はありません。
つまり、忌引き休暇は法律上の制度ではないため、会社に忌引き休暇の制度が設けられていなかったとしても、それ自体は何ら違法ではないのです。
忌引き休暇を利用する上で一番に確認することは会社に忌引き休暇の制度が設けられているのかということです。
まずは会社の就業規則を確認するなどして、忌引き休暇の有無を調べてみましょう。 -
(2)忌引き休暇の内容は企業によって異なる
忌引き休暇の制度が設けられていたとしても、忌引き休暇をどのような内容にするかは、企業が独自に定めることができます。
具体的には、企業によって以下のような項目に違いがあります。- 忌引き休暇日数
- 忌引き休暇を取得できる適用範囲
- 忌引き休暇に対する賃金支払いの有無
- 弔事の際の給付金の有無
- 忌引き休暇が適用される労働者の雇用形態
これらの項目についても会社の就業規則に規定があるはずなので、しっかりと確認しておきましょう。
3、忌引き休暇がない場合にとれる対応
会社に忌引き休暇制度が設けられていない場合には、以下のような対応を検討する必要があります。
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(1)上司や経営者に相談してみる
家族や親族の葬儀などに出席するためには、会社を休む必要があります。
もし忌引き休暇の制度がない場合には、まず、上司や経営者に相談してみるとよいでしょう。
身内の不幸というやむを得ない事情であれば、上司や経営者も事情を理解してくれて、特別に休暇を認めてもらえる可能性もあります。 -
(2)有給休暇を利用する
忌引き休暇の制度がない場合には、有給休暇を利用することにより会社を休むことも可能です。
有給休暇は、雇入れ日から6か月を経過し、全労働日の8割以上出勤した場合に与えられる休暇です。
忌引き休暇とは異なり、有給休暇は法律上の制度であるため、会社に有給休暇の制度が設けられていなかったとしても、有給休暇の取得要件を満たせば有給休暇を取得することが可能です。
労働者から有給休暇の取得申請があった場合には、原則として、会社には労働者の希望する日に有給休暇を与える義務があり、有給休暇の取得を拒むことはできません。
ただし、労働者が希望する日に有給休暇を取得させることで事業の正常な運営が妨げられる場合には、会社側には時季変更権を行使して別の日程に変更することも認められています。 -
(3)やむを得ず欠勤する
すでに有給休暇を使い切ってしまった場合や入社後間もなくて有給休暇を取得していないという場合には、有給休暇を利用して会社を休むことができません。
この場合には、やむを得ず欠勤することも検討する必要があります。
ただし、有給休暇であれば出勤義務がないため賞与や人事査定には影響がありませんが、欠勤の場合には出勤義務がある日に休むことになるため、賞与や人事査定において不利益が生じる可能性があります。
不利益を考慮したうえで、葬儀などに出席するために欠勤するかどうか、慎重に判断しましょう。
4、家族が死亡したのに会社のせいで休めないときはどうする?
家族が死亡したのに会社のせいで休めないときは、以下のような対応を検討してください。
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(1)労働基準監督署に相談
有給休暇は労働基準法に定められた労働者の権利であるため、原則として会社は労働者からの有給休暇の取得申請を拒むことはできません。
会社が有給休暇の使用も認めてくれないという場合には労働基準法違反になるため、労働基準監督署に相談してみることを検討してください。
労働基準監督署は、企業の労働基準法違反などの取り締まりを行う行政機関です。
労働基準法違反の疑いがある場合には、事業所への調査を行い、必要に応じて指導や勧告などの措置を行います。
労働基準監督署により指導や勧告が行われれば、会社も有給休暇の使用も認めなかった対応をあらためて、有給休暇の取得を認めてくれる可能性があるでしょう。 -
(2)弁護士に相談
労働基準監督署の指導や勧告には強制力がないため、会社によっては、労働基準監督署から指導や勧告を受けたとしてもそれに従わないこともあります。
また、労働基準監督署は労働者の代理人として会社と交渉をしてくれるわけではないため、救済手段としては十分なものとはいえません。
労働基準監督署に相談に行ったけど、是正されない場合等には、弁護士に相談することを検討しましょう。
弁護士であれば、労働者の代理人として会社と交渉を行うことができます。
そのため、有給休暇を取得させないことが違法であることを会社側に説明して取得を認めるように説得することができます。
また、交渉や説得を経ても会社側が有給休暇の取得を認めない場合には、労働審判や訴訟などの法的な対応も弁護士に依頼することが可能です。
5、労働問題は弁護士に相談
会社との労働問題でお困りの方は、まずは弁護士に相談してください。
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(1)労働問題の適切な解決方法をアドバイスできる
忌引き休暇は法律上の制度ではありませんが、有給休暇は法律上の制度です。
会社への対応方法は法律上の制度であるかどうかによっても変わってくるため、法制度に関する知識が必要になります。
法律の専門家である弁護士なら、労働者の状況に応じた最適な解決方法をアドバイスすることが可能です。 -
(2)労働者の代理人として会社と交渉ができる
労働問題が発生した場合、それを解決するためには会社との話し合いが不可欠です。
労働者個人で対応することも可能ですが、労働者個人から正当な権利を主張したとしても、会社側がまともに取り合ってくれない場合もあります。
また、労働問題の当事者である会社と交渉することは、労働者にとっては精神的に大きな負担となるでしょう。
法律の専門家である弁護士が代理人として交渉をすることで、会社側も法的な主張に基づくなどした要求等をむげに断ることができなくなり、話し合いにより問題が解決できる可能性を高められます。
また、労働者は交渉をすべて弁護士に任せることができるため、精神的負担も大幅に軽減することが可能です。 -
(3)労働審判や訴訟の対応も任せることができる
会社との話し合いで解決できない問題については、労働審判の申立てや訴訟提起によって解決を図る必要があります。
法的手続きにおいては、法律の知識や経験が不可欠です。
弁護士に依頼すれば、会社との交渉がうまくいかなかったとしても、引き続き労働審判や訴訟の対応を任せることができます。
6、まとめ
身内に不幸があった場合には、一般的には忌引き休暇を利用して会社を休むことができます。
しかし、忌引き休暇は法律上の制度ではないため、会社によっては、忌引き休暇制度が設けられていない可能性があります。
そのような場合には有給休暇を利用したり欠勤したりすること等を検討する必要があります。
有給休暇は法律で認められた労働者の権利であるため、会社から有給休暇の取得を拒否された場合には、労働基準法違反の可能性があります。
有給休暇が取得できないなどの問題に悩まされている労働者の方は、まずはベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています