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労災は自身が10割負担するって本当? 払えないときはどうすべきか

2024年04月11日
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労災は自身が10割負担するって本当? 払えないときはどうすべきか

山口労働局が公表している労災に関する統計資料によると、令和4年(2022年)に山口労働局管内で発生した労災事故は、3236件でした。前年と比べると1679件の大幅な増加となっています。

業務中または通勤中の出来事が原因で、ケガ、病気、障害、死亡などが発生した場合には、「業務災害」または「通勤災害」にあたります。このような労災が発生した場合には、労働基準監督署による労災が認定されることで、労災保険から各種給付の支払いを受け取ることができます。また、病院での治療費も労災保険から「療養(補償)給付」として支払われますが、受診した病院によっては、窓口での10割負担が求められることがあります。

本コラムでは、労災での病気やケガの治療の際に治療費が10割負担になるケースや治療費が払えない場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 山口オフィスの弁護士が解説します。

1、労災の医療費が10割負担になるケース

以下では、労災の治療では健康保険を利用することができない理由や、医療費が10割負担になる場合について解説します。

  1. (1)労災によるケガなどの利用では健康保険は使えない

    健康保険とは、病気やケガによって生じる経済的な負担を軽減する目的で加入する公的な医療保険制度です。
    通常、被保険者や被扶養者が病気になったり、ケガをしたりした場合には、健康保険を利用して病院を受診することで、年齢に応じて自己負担額が1割から3割に軽減されます。

    しかし、仕事中や通勤中の傷病に対しては、健康保険ではなく労災保険を使用しなければなりません
    労働者災害補償保険法7条1項により、仕事中や通勤中の傷病が労災保険制度の対象であると定められており、健康保険法55条1項(国民健康保険の場合は、国民健康保険法56条1項後段)では、労災保険が使える場合は健康保険を使えないと定められているためです。

  2. (2)労災病院や労災指定病院以外の病院を利用した場合には10割負担になる

    上記のように労災による傷病では、健康保険を利用することができませんので、基本的には病院に支払う医療費は、被災労働者の10割負担となります。
    そして、実際に窓口で10割負担の医療費を支払わなければならないのは、労災病院・労災指定病院以外の病院を受診した場合です

    労災病院は、厚労省が所轄する独立行政法人労働者健康安全機構が運営する医療機関です。また、労災指定病院は、正式には「労災保険指定医療機関」といい、医療機関からの申請に基づき、都道府県労働局長により指定された医療機関です。労災病院や、このような指定を受けた医療機関以外の病院を受診した場合は、治療費は10割負担となります。
    労災病院や労災指定病院であるかどうかは厚生労働省のホームページで検索することができるため、病院を受診する前に受診予定の医療機関が労災病院や労災指定病院であるかどうかを事前にチェックしておきましょう

2、10割負担の医療費が払えないときすべきこと

以下では、10割負担の医療費が払えない場合にとるべき対応を解説します。

  1. (1)通院先を労災病院や労災指定病院に切り替える

    労災病院・労災指定病院以外の病院で傷病の治療をした場合には、健康保険が使えないため、病院の窓口で10割負担の医療費を払わなければなりません。
    これに対して、労災病院や労災指定病院で傷病の治療をした場合には、労災保険から労災指定病院に対して直接に医療費の支払いが行われます。
    そのため、被災労働者が窓口で医療費を10割負担する必要がないのです。

    最初から受診する病院を選べる場合には、労災病院や労災指定病院を選択することで、医療費の支払いの負担を抑えることができます
    しかし、労災事故による緊急搬送などの理由で、最初に受診した病院が労災病院・労災指定病院以外の病院であった場合にはその病院に通院し続けると経済的負担が大きくなってしまいます。そのため、できるだけ早い段階で労災病院や労災指定病院への切り替えを行うことをおすすめします。

  2. (2)家族や親族に借りて支払いを行う

    労災病院・労災指定病院以外の病院では、病院の窓口で被災労働者が10割の医療費を支払わなければなりません。
    しかし、労災による医療費は労災保険からの補償の対象となっているため、いったんは被災労働者が10割負担をしなければならないものの、最終的には労災保険から被災労働者が負担した医療費を支払ってもらうことができます。
    つまり、10割負担といっても、あくまでも「一時的に負担しなければならない」ということなのです。

    ただし、一時的であっても10割負担の医療費を支払わなければならないというのは、被災労働者にとっては負担が大きいでしょう。
    また、経済的な事情によっては10割負担の医療費が払えないということもあるかもしれません。
    そのような場合には、家族や親族に立て替えて支払ってもらえるよう頼んでみることを検討してください。
    受診後に労働基準監督署に申請を行えば、後日に還付が受けられるため、そのことをきちんと説明すれば、立て替えを頼まれた相手も応じてくれる可能性が高いでしょう。

3、労災病院や労災指定病院へ切り替える手続き

以下では、「労災病院・労災指定病院以外の病院」から「労災病院」「労災指定病院」に切り替えるための手続きの流れを解説します。

  1. (1)労災病院・労災指定病院以外の病院(切り替え前の病院)での手続き

    労災による傷病を治療するため、労災病院・労災指定病院以外の病院を利用したとしても、その後、自由に受診先の病院を変更することができます

    なお、スムーズに切り替えを行えるようにするためにも、切り替え前の病院である労災病院・労災指定病院以外の病院からは紹介状をもらっておきましょう。
    もし紹介状がない状態で切り替え後の病院を受診すると、病状を把握するのに時間がかかったり、余分な検査に時間や手間がかかってしまったりする可能性が高いことに注意してください。

  2. (2)労災病院や労災指定病院(切り替え後の病院)での手続き

    切り替え後の病院である労災病院や労災指定病院では、医療費の支払いを労災保険から直接支払ってもらうために、以下の書類を提出する必要があります。

    • 「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」(業務災害の場合)
    • 「療養給付たる療養の給付請求書(様式16号の3)」(通勤災害の場合)


    これらの請求書は、厚生労働省のホームページからダウンロードすることもできるほか、最寄りの労働基準監督署で入手することも可能です。
    記載例などを参考にしながら必要事項を記入して、病院の窓口に提出しましょう。

    なお、上記の請求書には事業主の証明欄があるため、勤務の際に提出して記入してもらう必要があります。

4、労災保険に含まれない損害賠償は会社に請求

労災保険だけでは、災害によって負った被害の補償としては十分でない場合があります。
以下では、会社に対して請求できる損害賠償を請求する方法を解説します。

  1. (1)労災保険からの補償では不十分

    労災保険から受けられる補償には、以下のようなものがあります。

    • 療養(補償)給付
    • 休業(補償)給付
    • 傷病(補償)給付
    • 傷害(補償)給付
    • 遺族(補償)給付
    • 葬祭料(葬祭給付)
    • 介護(補償)給付


    これらは主に実際に発生した治療費などの金銭的負担に対する補償であり、労災により生じた精神的苦痛に対する損害賠償金である「慰謝料」は一切含まれていません
    また、障害が残った場合には労働能力が制限されることにより将来にわたって減収するという不利益が発生する可能性がありますが、それに対する損害賠償金である「逸失利益」も、労災保険からの補償には含まれていないのです。

    慰謝料や逸失利益は、会社に対して請求できる可能性があります
    労災保険からの補償だけでは不十分であると感じる場合や、慰謝料や逸失利益も請求したいと希望する場合には、会社に対して損害賠償を請求することを検討しましょう。

  2. (2)会社に対して損害賠償請求ができるケースとは

    労働基準監督署による労災認定を受けたとしても、それだけでは会社に対して損害賠償を請求できるとは限りません。
    会社に対して損害賠償を請求するためには、会社に安全配慮義務違反があったこと、または使用者責任があることを、労働者の側で立証する必要があるのです。

    安全配慮義務とは、労働者が健康かつ安全に働くことができるよう配慮する会社の義務をいいます
    たとえば、機械や設備の安全点検を怠ったために労働者がケガをしてしまった場合や、危険な業務に従事する際にヘルメットの装着が義務付けられているにもかかわらず未着用を黙認していた場合などは、会社側の安全配慮義務違反が認められる可能性があります。

    また、「使用者責任」とは、従業員による不法行為があった場合に会社が負うべき責任のことをいいます
    たとえば、倉庫内での作業中にフォークリフトを運転していた従業員が他の従業員にぶつかりケガをさせてしまったような場合には使用者責任が認められるため、事故を起こした従業員とともに会社も賠償責任を負うことになるのです。

  3. (3)会社に対する損害賠償請求にあたっては弁護士のサポートが不可欠

    会社に対して損害賠償請求をする際には、労働者の側で、会社の安全配慮義務違反や使用者責任を立証していかなければなりません。
    会社側の責任を立証するためには法律の専門知識や経験が必要となるため、専門家である弁護士のサポートは不可欠です

    また、弁護士に依頼すれば、会社との交渉だけでなく、証拠収集や損害賠償金の金額の計算、訴訟対応なども任せることができます。
    したがって、労災の損害賠償を会社に対して請求する際には、まずは弁護士に相談することをおすすめします

5、まとめ

労災による傷病には健康保険証が利用できないため、病院での治療の際の医療費を10割負担しなければなりません。
しかし、労災病院や労災指定病院を受診すれば、労災保険から病院に医療費が直接に支払われるため、被災労働者本人の負担はなくなります。
そのため、労災による傷病の治療は、できる限り労災病院か労災指定病院を受診することをおすすめします。
また、被災労働者に対しては労災保険からさまざまな補償が支払われますが、慰謝料や逸失利益などは労災保険からの補償には含まれていません。
慰謝料や逸失利益も受け取りたいと希望する場合には、会社に対して損害賠償を請求する必要があります。

労災の被害に遭われた方で、会社に対して損害賠償を請求したいと検討される方は、まずはベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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